著者:石田 麻琴

「それって、みんなやったらどうなるの?」から考えるビジネスの本質【no.0919】

 私はいやらしい人間なので、「それって、みんなやったらどうなるの?」という視点でモノゴトを考えてしまいます。

 インターネットの世界でよくあるのが、「注文ボタンを緑色に変えたらコンバージョン率が上がった!」みたいなやつです。あくまで事例のひとつと思いますし、事例紹介をしている方も「改善過程のひとつ」くらいでお話ししているのだと思いますが、受け取る側が「そうか!注文ボタンを緑色に変えたらいいのか!」と思ってしまうと、「じゃあ、それって、みんながやったらどうなるの?」と思ってしまうわけですね。

 実際にすべてのネットショップの注文ボタンが緑色になって、すべてのネットショップのコンバージョン率が上がったとしたら、それは素晴らしい話です。日本経済の不景気の明確で簡単な解決策になるでしょう。しかし、現実的にはお客様のお財布の中は一定なのですから、「注文ボタンを緑色に変えた」だけで売上が上がってハッピー、なんてことはないんですね。

 たとえばコンサルタント。私もコンサルタントのひとりですが、「●●さんのいうことに従っていれば売上が絶対上がる!」なんてことはありません。これも「注文ボタン緑色」の件と一緒の理屈です。「じゃあ、全員が●●さんのいうことに従ってネットショップを運営したら、すべてのネットショップの売上はあがるの?」ということです。こちらも、もし絶対があるならば日本経済の解決策になるのですが、実際は難しいでしょう。

 市場のタイミングによって、「××をやれば、売上が上がりますよ」という状況はありえます。インターネットの世界でも、「需要>供給」のバランスの良い時期に参入した方々には、たくさんの恩恵を受けた方がいます。SEO対策をすればとか、リスティング広告をかければとか、注文ボタンを緑色に変えればとか、そもそもの努力や商品力もあったのでしょうが、「××をやれば」の時期はどの業界にも「一瞬」訪れます。

 ただ、「一瞬」です。99%の人間はその「一瞬」を掴まずに終わりますし、「一瞬」を掴んだ1%の人間でも、予想して、狙ってその「一瞬」を掴めたかというと、ほとんどの場合が「たまたま」ということになります。

 「××をやれば」はみんながやります。注文ボタンを緑色に変えさえすればよければ、みんなが今日会社で取り組みます。有能なコンサルタントを雇いさえすればよければ、みんなが今日銀行にいってお金を借りてきます。「絶対」があるなら、きっと銀行も簡単にお金を貸してくれることでしょう。でも、世の中ってそうはならないんですね。だって、やれることはみんながやるから。

 そう考えると、結局ビジネスで成功するか否かは、「人がやりたくないことをやる」か、「人よりも圧倒的に量をこなす」か、「人が我慢できないくらい時間をかける」か、「人よりも断然早く動くか」、そのくらいしかないのではないのでしょうか。本質論です。

 ちなみに「人よりも練り込まれたアイデア」は正直ありえるのかわかりません。「人がやりたくない」「人より圧倒的な量」「人が我慢できない時間」「人より早い着手」のいずれかを満たしている状態で、「人より練り込まれたアイデア」はあるのだろうと思いますが、いずれもない状態で「人よりも練り込まれたアイデア」だけでは成功は難しいのではというのが私の考えです。間違っているかもしれません。

 やっぱり最後は、地味で手間で面倒なことを積み重ねていける人が勝つのではと思います。「量をこなす」「時間をかける」「早くやる」。いずれにせよ「人がやりたくないこと」です。

 おわり。

 

1コメント

Comments are closed.