著者:石田 麻琴

わからないから、全部やる。わからないうちは、余計な判断をしない【no.0833】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「お客様は、黙ってネットショップから去っていきます」

 麻間(あさま)さんは鋭い眼差しで七海さんと友花里さんの方をみました。七海さんと友花里さんはその眼差しに、少したじろぎました。

 少しの沈黙の時間が流れました。麻間さんがいいました。

「だから、お客様って怖いですよね」

 七海さんと友花里さんは、「あんたの方がよっぽど怖いよ」と思いました。

 それから、麻間さんと七海さんと友花里さんは、ネットショップの「マジックミラー理論」について話し合いました。おにぎり水産のネットショップ「笹かまオニギリ」として、どんな情報をお客様に提供しておくことができるか、です。

 麻間さんがナビゲートとフォローアップをしながら、七海さんと友花里さんがアイデアを出していく方式で打ち合わせが進んでいきます。ホワイトボードには七海さんがアイデアを書き出していきました。ふたりの議論が止まると、すかさず麻間さんが助け舟を出してくれます。

 30分もしないうちに、ネットショップ「笹かまオニギリ」の「お尻」の具体的なカイゼンアイデアがホワイトボードいっぱいに並びました。「けっこう出たね・・」。七海さんがつぶやきました。

「じゃあ、どれからやりましょうか。優先順位をつけていきましょう。七海さん、友花里さんどうしましょう」

 麻間さんが七海さんと友花里さんに促します。

 猪井氏(いいし)事務所のコンサルティングの方針は、「自分たちに決めてもらう」です。猪井氏先生や麻間さんがおにぎり水産ネットショップの具体的なカイゼン策を決めるのではなく、あくまで鬼切社長や現場のスタッフである七海さん、友花里さんに施策を決めてもらうのです。

 麻間さんは、猪井氏先生がいつもいっている言葉を大切にしています。「人は、他人が決めたことは真面目にやらない。自分が決めたことは本気でできる。だから、自分たちに決めてもらわなくちゃいかん」

 猪井氏先生と麻間さんが決めるのは簡単です。現場のスタッフに決めてもらうのは簡単ではありません。決めた判断がズレる可能性があります。決めること自体を嫌がる可能性もあります。「何もしない」というふうに決めることもできるわけです。

 七海さんと友花里さんがホワイトボードに書かれたカイゼンアイデアの横に、「1、2、3・・」というように優先順位をつけました。ふたりはすべての項目に番号を振りました。ネットショップのカイゼンアイデアに1番から34番までが振られています。

「七海さん、友花里さん、もしかして、全部やるつもりなんですか?全部やるとなるとけっこう仕事のボリュームがあると思うんですが・・」

 麻間さんは少し驚いて、思わずふたりに聞きました。友花里さんからは意外な答えが返ってきました。

 「私たち、ネットショップのことまだ全然わからないので、どれが効果がありそうでどれが効果が無さそうかなんてわかりません。わからないのにやるかやらないかを判断するのって危険だと思うんですね。だったら、まずは経験として全部やってみた方がいいかなと思って。鬼切社長も、『いろいろ試してみなよ』と言っていたので」

 友花里さんの答えに麻間さんの気持ちは熱くなりました。

「わからないから、全部やる」、「わからないうちは、判断しない」。猪井氏先生が鬼切社長に過去に伝えたのかはわかりませんが、猪井氏先生も同じようなことをいつも麻間さんに伝えています。「わからないからこそ、『やる』意味があるんだ」と。

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3 コメント

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