ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
猪井氏(いいし)先生が退出して、おにぎり水産の会議室には七海さんと麻間(あさま)さんのふたりだけになりました。七海さんは、少しだけ緊張しました。麻間さんがちょっとしたイケメンだからです。
「さて、では具体的にどんなアクションをしていくかを考えましょうか」
麻間さんが声をかけると、七海さんは小さく頷きました。麻間さんは続けていいました。
「猪井氏先生が先ほどおっしゃっていた、おにぎり水産のネットショップがどんなお客様を対象にするのか?ここがアクションを決める上で重要な部分だと思います。それは『笹かまオニギリのことを知っている人』ということです。七海さん、ここから何か思い当たりませんか?」
七海さんは考えました。「笹かまオニギリのことを知っている」とはどんな人のことだろうか。「笹かまオニギリを知ってもらう」機会はどこにあるのだろうか。そうだ。笹かまオニギリを知ってもらう機会は、おにぎり水産の工場に併設している「笹かまオニギリ」の実店舗しかない。七海さんはひらめきました。
「麻間さん、『笹かまオニギリのことを知っている人』って、『おにぎり水産の工場見学にきた人』じゃないでしょうか。みなさん工場見学のあと、必ず笹かまオニギリの実店舗でお土産を買われるので、もしたらそこで印象に残ったのかも・・」
「七海さん、いいですね。『笹かまオニギリのことを知っている人』というのは、つまり『笹かまオニギリの存在を知っている人』ということですよね。どこかで笹かまオニギリのことを知ってもらえないと、笹かまオニギリのネットショップを探してもらうチャンスもないわけです。これ、インターネットの特徴なんです」
七海さんが、少し疑問をもったような感じでいいました。
「すいません、麻間さん。インターネットの特徴、ってどういうことですか?」
「はい、失礼しました。七海さん、説明しますね。インターネットって、自分の興味がないことを『偶然知る』機会がすごく少ないんです。例えば、おにぎり水産の工場、おにぎり水産の実店舗『笹かまオニギリ』の場合、他の目的でバスツアーに参加された方が、たまたまおにぎり水産の笹かまぼこのことを知るチャンスがあるわけじゃないですか。でも、笹かまぼこに興味がない人が、インターネットでわざわざ『笹かまぼこ』って検索しますか?」
七海さんは一瞬「クスッ」と笑ってからいいました。
「私の場合、おにぎり水産でけっこう働いているので、笹かまぼこについて気になることがあると検索しちゃいますけどね・・。ただ、普通の人は、『笹かまぼこについて検索しよう!』って思うこと、なかなかないと思います」
「そうなんですよ。インターネットって、インターネットを使うユーザーの『興味』や『欲求』からスタートするんです。つまり、『探す目的』『調べる目的』『知る目的』がなければ、ユーザーに検索してもらえないんですね。その点、おにぎり水産のように工場があったり、実店舗があったりすると、『あれ、こんなのあるんだ。面白そう』って、偶然気にしてもらえる可能性があるじゃないですか。そこがインターネットの特徴なんです」
七海さんは麻間さんがいっていることを手帳にメモしながら話を聞きました。
「少し難しい言葉でいうと、『潜在顧客』と『見込顧客』というものです。おにぎり水産の工場や実店舗は『潜在顧客』にリーチすることができます。インターネットは『見込顧客』に提案するためのものです。インターネットで『潜在顧客』にリーチするのって、簡単じゃないんですよね。このあたりは、これからマーケティングを進めていくことで、より理解が深まりますから」
麻間さんはアツく話しました。いつの間にか、麻間さんの額は汗でびっしょり、濡れていました。
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