著者:石田 麻琴

ブランドは「自分をどう見せるか」ではなく、「自分がどう見られるか」【no.0645】

 ブランド・・素敵な響きです。

 ブランドのある人間、ブランドのあるサービス、ブランドのあるショップ・・なりたい。なれればいいな。でも、はたしてどうやったらブランドになれるの?という話です。ブランドの定義も、よくわかりませんし。

 ブランドとは、あくまで「人の意識」の中にあるものではないでしょうか。とある衣料メーカーでも、私がブランドと思っていても、他の人はブランドだと思っていなかったりします。ブランド力のあるロゴはカッコよく見えますが、ブランドのないロゴはカッコよくみせていても、なんだかダサくみえます。ロゴを「見せる側」ではなく「見る側」がどう捉えるか。そこにブランドの真理があるような気がします。

 はたして、ブランドというのは自分自身で意図的に作り上げることができるのでしょうか。

 ブランド論を学ぶことができる学校があります。ブランディングについてコンサルティングをしてくれる会社もあります。当然、全否定はしませんが、そこで学んだこと教えてもらったことを実践すれば、ブランドが作れるかというと、甚だ疑問です。あくまで知ることができるのは、ブランドに成長したサービスの「共通項」ではないでしょうか。やはりそれは、後付け的な理屈になってしまうと思います。

 ブランドのロゴを決めるのは大事。フォントを決めるのも大事。基調となるカラーを決めるのも大事。行動指針やポリシーを決めるのも大事。捨てるものを決めるのも大事。とはいえ、それだけで情報の受信者である一般の人々が「ブランド価値」を感じてくれるわけがないですよね。

 ブランド力とは「実績の継続」によって生まれるものだと思うのです。

 「私はブランドです!」と言い張っても、最初は見向きもしてもらえません。ひとりひとりのお客様(候補)に膝をつけ合わせて説明をして、最初のサービス利用者を探さなくてはいけません。初めは実績がありませんから、理念に共感をしてもらい「時間をもらう」しかありません。「泥臭い」仕事です。世間のブランドのイメージとは、真逆の行為だと思います。ただ、この「泥臭い」仕事を経なければ、「実績を継続」することはできません。人に噂をしてもらうまでは、自分で叫び続けるしかないのです。

 すでに株式上場をしている、とあるレビューサイトの話です。現在はレビューサイトとして確固たるブランドがあり、自然にレビューが集まってくる状態ですが、立ち上げ当初は全くレビューが集まりませんでした。何をやったか。全国を回って、お客様(候補)ひとりひとりと会い、1件1件、合計1,000件のレビューを集めたのです。それが、ブランド力の大元になっています。

 まずは「泥臭い」仕事。いわゆるブランディングはもっと後です。

 日本人アスリートでブランディングに成功した選手といえば、中田英寿さんです。中田さんは日本代表のフランスW杯出場決定後、一気にメディアの取材が増えました。そのタイミングでPR会社と契約し、ブランディングを始めたのです。学校で学ぶブランド論やブランディング会社のコンサルティングは、「人に注目されていない」タイミングではなく、「人に注目された」タイミングで活用するもの、ということではないかと思います。

 あくまでブランドとは「実績の継続」によって生まれるもの、そしてそれは「自分をどう見せるか」ではなく、「自分がどう見られるか」なのではないでしょうか。「自分をどう見せるか」ばかりに気を遣って、「泥臭い」仕事を怠ってはいけませんよね。人はそう簡単に、サービスを噂してくれるわけではありませんから。

 おわり。