ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
おにぎり水産の新しいネットショップ「笹かまおにぎり」がオープンしてから10日。ネットショップ担当の七海さんは悩んでいました。一件たりとも受注がこなかったのです。4月1日に華々しくオープンして、笹かまぼこ用の在庫も増やしていましたが、注文が無くては困ります。「笹かまおにぎり」の実店舗が賑わっているので、在庫が残る心配はありません。ただ、お客様がどんどん入ってきてくれ、どんどん購入してくれる実店舗を見ると、七海さんは少し切ない気持ちになりました。
ネットショップがオープンしてからちょうど2週間後は猪井氏(いいし)先生とのミーティングの日でした。猪井氏先生がおにぎり水産の会議室に入り、椅子に座ると同時に七海さんは泣きつくような声で言いました。
「猪井氏せんせ~、ネットショップ、全然売れてないんですよ~」
オープンから2週間悩みを抱えてきたこと、それをやっと相談できる相手がきたことから、七海さんから感情が溢れました。少しだけ、涙を流してしまいました。人一倍、責任感の強い七海さんです。相談できる相手もなく、自分ひとりでプレッシャーを抱えていたようでした。
「おー、七海はん。そんな泣くことないぞ。ネットショップはまだ始まったばかりやないか。売上がゼロだって、そんな気にすることないで」
猪井氏先生は七海さんをなぐさめました。
「でも、でも・・だって、一件も注文がきてないんですよ。一件くらい注文がきたっていいはずじゃないですか。それがゼロですよ。なんでそうなっちゃうのかって、全然わからなくて。あんなに『笹かまおにぎり』の実店舗は売れているのに・・」
猪井氏先生は、「まあまあ」と両手のひらでジェスチャーをしながら言いました。
「七海はん。まず、実店舗とネットショップを比べても仕方ないぞ。実店舗というものはな、『そこにある』ことが非常に大きな価値なんじゃ。『そこにある』から売上が立つ。ネットショップは『そこにある』ことに何の価値もないんじゃ。広い広いインターネットという無限に広がる海の中に、実店舗を作ったようなもんじゃ。『笹かまおにぎり』のネットショップがあるなんて、まだ誰も知らないんじゃろう」
七海さんは猪井氏先生の方をじっと見て、時折頷きながら話を聞いていました。
「しかもな、『笹かまおにぎり』の実店舗は、とてもお客さんに『買われやすい』んじゃ。バス旅行のルートにおにぎり水産の工場見学が入ってるんじゃろう。笹かまぼこの工場見学をして、できたての笹かまぼこを食べさせてもらって、出たところに実店舗があったら、みんなお土産に笹かまぼこを買っていくわな。そもそも『笹かまおにぎり』の実店舗とネットショップは別物なんじゃ。ちょっと難しい言葉でいえば、『ビジネスモデルが全く違う』わけじゃ。だから、実店舗とネットショップの比較はせん方がええ」
猪井氏先生にそう言われて、七海さんは少し落ち着いたようでした。
「これからゆっくり、ネットショップを運営しながら、七海はん流のノウハウを作っていけばいいんじゃ。そりゃ売上はあった方がいいんじゃが、今はひとつひとつネットショップ運営の課題をクリアしていくことが重要じゃ」
「はい。猪井氏先生ありがとうございます。それで、私は何をすれば良いんでしょうか。お客さんの顔も見れないですし、どうしたらいいか全然わからなくて」
猪井氏先生はひと呼吸をおいて言いました。
「『何をするか』を考えるより、まずは『成果を管理する方法』を作るところから始めるんじゃ」
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[…] 第九十三話 「何をするか」を考えるより、「成果を管理する方法」を作るところから始める【no.0588】 […]