著者:石田 麻琴

2015年のEコマース業界、ネット業界、小売り業界の展望【no.0488】

 すでに今年も20日ほど過ぎてしまいましたが、2015年のEコマース業界(ネット業界、小売り業界)の展望ということで書いてみようと思います。

 まずは、大局的なところからですが、注目はオムニチャネルの実装でしょう。Amazon、セブンアンドアイグループ、楽天、そこにYahoo!も加わって、リアルとネットのマーケティングを融合させたサービスを各社スタートさせようとしています。昨年の秋頃までに、各社それぞれの計画を発表していますが、それが実装されるのが2015年の春から秋にかけて、ということになります。

 オムニチャネルの本質は、リアルとネットの顧客データの統合です。現状だと、在庫データ管理の一元化や、物流のオムニチャネル化、決済の多チャネル化などの整備から取り組み始めている企業が多いように感じられますが、本丸の部分にはどのタイミングでどのように食い込んでくるのか、それを楽しみにしたいですね。

 現状だと、レコメンド等、データのハンドリングが上手いAmazonが抜け出しそうな気がするんですが、どうでしょうか。データマーケティング系の人財を強化することができれば、最も有利なのは「実店舗もあって、商品も作れる」セブンアンドアイグループなのかな、という気もします。オムニチャネルという点に関しては、楽天とYahoo!は若干厳しいかなぁ・・という感じです。

 さて、大局的なところではなく、中小・ベンチャーが乱立するEコマース業界・ネット業界の展望です。

 まず、製造卸、実店舗を母体としてもたない、いわゆる「ネット専業」の事業主にとっては2014年以上に厳しい2015年になると思います。何より、インターネット上から新しいユーザー(あえて「お客様」ではなく)を獲得する術がない。

 もう爆発的なスマホユーザーの増加はありえませんし、2014年よりもスマホ閲覧の伸びは鈍化していくと思います。通信会社がパケット使用を規制、課金し始めていますしね。ユーザーがインターネットを利用する伸びに対して、Eコマース含めWEBサービスの提供側の数の伸びが早い「需要<供給」の状態がより進んでいくものと思われます。(スマホが一気に伸びた時代はチャンスでしたね)

 そうなるとEコマース業界、ネット業界ともに、収益母体となるビジネスを持っている会社が圧倒的に強いわけです。2014年も、長く業過をリードしていたEコマースの会社のM&Aや、業界では上場間近かと思われていたWEBサービスの会社のM&Aがありましたが、今年はこれがさらに進むんじゃないかなぁと思っています。

 ネットショップ系の企業のM&Aは、もうすでに何があっても驚かない状況ですが、今年「あれ、この会社売っちゃうんだ?」みたいな可能性があると思われるのは、ニュースキュレーションサービス系、CtoCコマースプラットフォーム系、インスタントECカート系あたりじゃないかなと思います。当然、表向きは「事業拡大のための前向きなM&A」的な見せ方をすることになるので、収益的な真意はわからないままになると思いますが。

 テクノロジーは著しく進化し、日々新しいサービスが出てきていますが、それに人間が全く追いついていない状況です。一部の情報強者は新しいサービスに反応しますが、他の8割以上の人間にとっては「どうでもいいこと」なんですよね。キャズムでアーリーアダプターもしくはアーリーマジョリティに届かなくなっているわけです。

 けれども、VCに投資してもらっているようなWEBサービス系の会社って、市場がないのに事業を成長させなくてはいけない。だから、テレビCMなどのマス広告を使って、半ば強引にサービスをアーリーマジョリティに届かせ、市場を自ら作らなきゃいけないんですよね。去年もこんな状態、ありましたよね。サービスを「つくる人」が「つかう人」で、狭い範囲で「すげーサービスだ!」と言い合っている。そんな状態の末路が、今年訪れる気がします。

 おわり。