著者:石田 麻琴

『実店舗にきてくれたお客さんにネットショップでも買ってもらう』ため試行錯誤する。【no.0417】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「それで、すいません、猪井氏(いいし)先生。前にも聞いたかもしれないんですけれども、おにぎり水産の工場見学と実店舗にこられた方だけをネットショップのお客様の対象にするということは、インターネットからおにぎり水産にたどりついたお客様は対象にしない、ということですか?」

 猪井氏先生はひと言だけ「うん」と言いました。「まあ、もしもそういうことがあったらラッキー、いうことじゃな」。

「えー、しかし、やっぱりどうせインターネットを使うんだったら、インターネットからも新しいお客様に笹かまぼこを買ってもらいたいじゃないですか。なんでわざわざ好んでその可能性を無くすのか、それがよくわからないんですが」

「鬼切はん、『そういうことがあったらラッキー』て、別に可能性を無くしてるわけじゃあらへんがな。当然、インターネットでいろいろ笹かまぼこを探して、運よくおにぎり水産のネットショップにたどりつくお客さんもいるじゃろう。だから可能性はゼロじゃないじゃろ。どういうことかゆうたら、『実店舗にきてくれたお客さんにネットショップでも買ってもらう』ために、まずそこを徹底して試行錯誤していこう、ゆう話じゃ。1ができへんヤツは、2はできへんぞ。二兎を追う者は一兎をも得ずじゃ」

 「わかりました」。鬼切社長は、納得できたようなできていないような不思議な感じでしたが、猪井氏先生としての意図があるのだろうと思い、ここは引き下がることにしました。「ほしたら、自社ドメインサイトでネットショップやるゆうことで、まとめてみぃ」。猪井氏先生が言いました。

「商品原価率が7%、物流費率が7.8%、固定費(人件費)率が4%、システム利用料の料率が自社ドメインサイトでのネットショップ出店と考えると4%ですね。これを合計すると、22.8%‥」

「まあ、プレミアム笹かまぼこが1セット5,000円で売れるか。しかも年間1億円分売れるか。そのあたりも含め、不確実性の高い数字なんじゃけども、まあ、計画なんてどんなんも不確実なもんじゃからな。はっはっは!」

 猪井氏先生は大きく笑いました。その様子を見ていた鬼切社長は、少し不満そうに言いました。

「そんな、不確実性の高いことを言われても困りますよ。そもそも笹かまぼこが1セット5,000円で売れるもんなんですかね。はっきり言って無理だと思うんですが」

「鬼切はん、無理ゆうたら無理。可能ゆうたら可能な可能性があるわな。ひとまず、まだアイデアを考えても実践してもいないのに、『はっきり言って無理』ゆうのはやめようや。つまらんで」

 「まあ、そうなんですが・・」。鬼切社長はうつむきました。

「あんな。鬼切はん。ワシ、笹かまぼこを1セット5,000円で売ろうゆたのは、冗談に聞こえたかもしれんけど、本気じゃぞ。鬼切はんには、笹かまぼこを5,000円で売るくらいの気持ちでやって欲しいんじゃ。だって、この前までやっていたショッピングモールのネットショップで、笹かまぼこの1,000円のセットは売れることがわかったんじゃろ。別にそこにチャレンジすることはないがな」

 「しかし・・」。鬼切社長は「5,000円のプレミアム笹かまぼこ」は厳しいと思っていましたが、猪井氏先生に反論する言葉が見つかりませんでした。

「まあ、このおにぎり水産の笹かまぼこを5,000円にできるかプロジェクトは無謀なチャレンジではあるんじゃけども、これ、ワシは鬼切はんだから、こんな提案をしてるんじゃぞ。他の会社だったら、そんな無謀なチャレンジは怖くて提案できんわ

 「ん?」。鬼切社長は、猪井氏先生が言っていることの意味がわかりませんでした。

「鬼切はん、なんでおにぎり水産だからワシがこんなこと言うのか、わかるか?」

 「わかりません。教えてください!」。鬼切社長は即答しました。

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