著者:石田 麻琴

「違い」は非効率から生まれる。まず「最高」を想像しよう【no.0395】

 まず、自分の思う「最高」を想像しましょう、という話。

 事業を成長させていく上で、「効率性」というのは重要なポイントのひとつです。コンピュータの進化によって、人間の手間がシステム化されています。文字の入力も、数字の計算も、商品の組み立ても、コンピュータによって行われる時代です。人が自分の頭で考え、自分の手を動かすことは「非効率」であると捉えられ、嫌がられる時代でもあります。

 ネットショップなど、インターネットビジネスは、その業務のほぼ全てをコンピュータ上で行っているわけですから、より「システム化」と「効率化」に比重が置かれます。そして、「システム化」と「効率化」がなければ、成り立たないビジネスでもあります。WEBページのテンプレート化、サイト更新の自動化、データベースの活用による作業時間短縮、問い合わせメールの自動レスポンス等、業務をシステム化することによって、大量の注文を少ない人数でカバーできるようにしています。だから、利益率を薄くしても、ビジネスが成り立っているのです

 ここまでが、これまでのビジネスの流れです。どんどん仕組化して効率性を上げる。どんどんシステム化して人件費を抑える。賃金の安いところに仕事を渡し続けて、そして利益を残す。それを実現してきたのがこれまでの時代です。しかし、それももう限界です。インターネットやアプリケーション、クラウドの進化によって効率化、システム化での差別性が薄れています。賃金の安いところも、アフリカに仕事を振った時点で終了です。あとは、市場に合わせて賃金を上げていくしかありません。

 となると、「違い」を出すにはどうすれば良いか。一見、効率化できない、仕組化できない、システム化できないという理由で、「いままで避けていた」ところに鉱脈がある、ということになります。

 例えば、です。「最高のおもてなし」を目指すネットショップがあるとします。「最高のおもてなし」を提供するならば、注文をいただいたお客様に一通一通感謝のお手紙を書きたい、暑中見舞いと年始のご挨拶のお手紙を書きたい、商品のアフターフォローに関するお手紙を書きたい、しかもその全てを「手書き」で書きたい、という意見があったとします。「最高のおもてなし」なのですから、手書きの文章を印刷するのではなく、お客様に合わせた文章を「1つ1つ、手書きで」書くのは、当然というわけです。

 1日の注文が10商品程度なら、「空いた時間に書きましょうね」という話になります。しかし、1日の注文が50商品、100商品に増えることを考えると、「とてもじゃないけどできない」という話になるはずです。1通1通、お客様に合わせて文章を書くことは、システム化ができませんし、非効率なわけです。結果として、「手書きでお手紙を書く」案は却下ということになります。しかし、考えてみてください。自分達がアイデアとして出した「最高のおもてなし」を実践せずに、「最高のおもてなし」をしているお店だと言えるでしょうか

 システム化によって対応できる付加価値、効率化の中でも対応できる付加価値は、どの事業者でも真似ができる付加価値です。本当の「違い」を生むことができる付加価値とは、「非効率」な付加価値ではないでしょうか。ビジネスの二極化により、中小零細の事業者は他サービスとの「違い」を生みださなくては適正な利益を確保することができません。「汗水を流して」付加価値を提供するところまで、時代は来ているのではないかと思います。

 システム化できないから、効率的でないから、そんな理由でサービスの幅を狭めるのではなく、まず自社のサービスの「最高」を想像してみてください。そして、たとえそれが非効率で、人間の手作業ばかりになってしまっても、その「最高」を実践してみてください。それがあなたのサービスの「違い」になりますし、非効率を繰り返すことで「効率」が見えてくる可能性もあります。実践を重ねるからこそ、「どうすれば仕組化できるか」が見えてきます。頭ごなしに否定をしていては、一生「非効率」のままです。

 おわり。