ネットショップあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
鬼切社長が、工場併設の実店舗「笹かまオニギリ」のレジ&接客担当をしてから、はや10日間が経ちました。当初は1週間だけの予定でしたが、鬼切社長は思いのほかレジと接客の仕事が好きになってしまい、その期間を過ぎても実店舗で働いていたのでした。
実店舗に来られたお客様から、笹かまぼこについての質問を受けたり、何ともない雑談を交わしたりする中で、お客様がどんなことを考えているのか、生の会話を通して知ることができるのが面白かったのです。
鬼切社長自身、生でお客様と触れ合うことは、この数十年ほとんどなかったので、とても勉強になりました。お客様からの質問には、鬼切社長では答えられないものも多く、その度に事務所や工場のスタッフに聞いて回りました。自分の会社の製品について、十分な知識を持っていなかったことを感じ、鬼切社長は反省をしました。と同時に、この10日間で、かなり笹かまぼこにも詳しくなりました。
そして、猪井氏(いいし)先生がまた、来る日を迎えました。
「猪井氏先生、おはようございます!」
おにぎり水産の事務所の入口で猪井氏先生を出迎えた鬼切社長は、元気よく声をかけました。
「おおー、鬼切はん、おはよう。なんか元気じゃし、エエ顔をしとるなぁ。どうやら良い成果があったようじゃな」
「いやー、まぁ、どうかわからないですけどー・・」
鬼切社長は少し照れながら、猪井氏先生を会議室に通しました。買い換えたばかりのフカフカのソファーに座ると、鬼切社長が話し出しました。
「猪井氏先生、今日はありがとうございます。実は、つい昨日まで、実店舗のレジと接客の担当を続けていまして、資料にはまとめる時間がなかったのですが、自分の頭の中には、お客様のイメージができてきた気がします。資料をつくるよりも、なるべく長く、実店舗でお客様と接していた方が良いかと思ったので」
「おー、そうか。ええなええな。資料なんかどうでもいい。ここで鬼切はんに話してもらえばいいだけだからな。それより、現場でお客さんの顔をみて、しっかり話すことの方が大切じゃ。それで、おにぎり水産ネットショップのお客さんについてだじゃけど、どう思った?うまく話そうとせんでいいから、自分の言葉で話してみぃ」
「そうですねぇ」。鬼切社長はななめ上を向いて、この1ヵ月間を頭の中で振り返りながら話し出しました。
「おにぎり水産のネットショップのお客様はどんな方か、というところから始めは考えていました。ただ、途中から考えていることが何なのか、よくわからなくなってきたんですね。どこがわからなくなったかというと『ネットショップの』というところです。『ネットショップの』がつくことで、どこか特別なお客様に定義をしなきゃいけないのか、と思ってしまったんです」
猪井氏先生はウンウンと頷きながら聞いていました。
「つまり・・」(猪井氏先生のつぶやき)
「つまり、『ネットショップの』お客様と、『おにぎり水産の』お客様に違いはあるのか、ということなんです。いままでは『ネットショップの』お客様というのは、『おにぎり水産の』お客様とはある種違うようなイメージで考えてきたんですけども、本当は、『ネットショップの』なんていう部分はどうでも良くて、『おにぎり水産の』お客様に買って欲しいな、と思ったんです。インターネットでも」
猪井氏先生はウンウンと頷きながら聞いていました。
「なんで・・」(猪井氏先生のつぶやき)
「なんで、そう思ったかというと、工場併設の実店舗である『笹かまオニギリ』で10日間以上、生のお客様と接することができたからなんですね。この10日間で、私の考え方がガラッと変わりました」
猪井氏先生はウンウンと頷きながら聞いていました。
「それは・・」(猪井氏先生のつぶやき)
「それは、まさに、猪井氏先生が実店舗で接客しろと言ってくれたおかげです」
「そんな褒め言葉はええんじゃ。続き続き。続きを教えてくれ」
つづきはこちら。