ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら)
そもそも、いま、おにぎり水産のネットショップが抱えている3,000人の顧客リストは、どうやって手に入れたものだろうか。一回以上購入してくれ、メールマガジンを流すことができる3,000人は、そもそも「なぜ」おにぎり水産ネットショップで笹かまぼこを買ったのか。鬼切社長は、半年前のことを思い浮かべながら、話し出しました。
「ネットショップを始めたころは、全く売れなかったんですよね。売れない日々が続いて、スタッフのみんなも忘れたころに一件の注文がきました。まあ、東京に住んでる私の息子だったんですけどね。少しあと、ショッピングモールの担当の方がこちらに訪れて、インターネット広告をやることになったんでした。たしか‥『グルメ特大号』みたいな企画だったと思います。それで1,000人のお客様に購入いただくことができたんですよね」
「なるほど。ということは、最初に買ってくれた1,000人については、食べ物に興味がある可能性が高いわけじゃな」
猪井氏(いいし)先生が、邪魔にならない程度の相づちを入れます。
「そうですね。グルメ特大号の広告を見てくれて買ったお客様ですからね。その次に広告をかけたのが母の日でした。この広告は高額だったんですが、それでも1,000人のお客様が買ってくれました。母の日か・・よく考えると、なんで母の日に笹かまぼこの商品を出したんですかね。なんか少し変なような・・」
「そうじゃな。いまとなっては、『母の日に笹かまぼこの広告をかけた』という事実しか残っとらんだろうから。正しい検証はできないんじゃが、母の日と笹かまぼこって今ひとつマッチしていない気がするわな。特に、母の日のプレゼントというような見せ方をして売ったわけでもないんじゃろう?」
「はい。それまでと同じように、笹かまぼこのページにお客様を誘導しました。最後に広告をかけたのが父の日ですね。『お酒のおつまみ』的な広告だったので、大きな効果を期待していたのですが買ってくれたのは300人だけでしたね。同じ商品にお客様を流し続けたのが敗因かと思いますが・・。あとの700人は、ショッピングモールの笹かまぼこランキングからネットショップにアクセスしてくれたお客様、もしくはショッピングモールの検索からおにぎり水産の笹かまぼこを見つけてくれたお客様だと思います。これで合計3,000人ですね」
「なるほどな。母の日の広告と同じように、グルメ特大号も父の日広告も、他からお客さんがきたゆう話も、今となっては『そうだった』いう事実しか残っとらんわけだな。これでは、正直、予測もあくまで予測の域を出ん。次に繋がる仮説が立てられんのじゃ。例えば、母の日は父の日に比べて需要が大きい。それは確かな情報じゃ。お父さんへのプレゼントは無視しても、お母さんへのプレゼントは欠かさないっていう人がおおいんやな。まあ、ワシも、もう20年以上、父の日、もらってへんけどな。ワッハッハッハ・・!」
「じゃあ、父の日の方が売れなくて当然だったわけですね?」
「いやいや、そこをちょっと待ちぃや。母の日に比べて父の日の市場は小さいけども、新聞の一面にどどんと『父の日は、お酒のつまみに笹かまぼこ』って出すのと、新聞の端っこに『母の日は、美味しい笹かまぼこのプレゼントを』って出すのだと、どっちが売れると思う?」
「そりゃあ、父の日広告の方ですよね?」
「本当か?」
「だって、新聞の一面と、新聞の端っこですよね。決まってるじゃないですか」
「本当に本当か?」
「間違いないです。この文脈からしても、父の日の方でしょう」
「それが、わからんねんて。ここでの答えは、『わからない』が正解じゃ」
「はぁ!?」
つづきはこちら。