著者:石田 麻琴

人材育成は、実践する当事者が決断するのがセオリー。 【no.0179】

(前回のブログを読まれていない方は、まずこちらからお読みください)

 前回は、「自分達で気づく」ために、現場のスタッフにたくさんアイデアを出してもらい、たくさん実践してもらう、その環境づくりが必要、という話をしました。自分達で考えて決めた施策ならば、自分達で責任を持って実行され、成果の数字という「定量的」なツールを使って正確に検証ができるようになる、というわけです。

 これを実現するために、「アイデアを出した人が責任を持って実行する」というような文化があれば、ひとまず棚に置き、「アイデアを出す」と「実践する」をふたつのフェイズに分けて、まず「アイデアを出す」ところから活性化を目指していきましょう。前者の盛り上がりがなくて、ハードルの高い後者にチャレンジするのは、なかなか難しいという話でしたね。

 現場のスタッフが自主的に出した意見を、簡単に否定してはいけません。心の中で、「あー、それだめそうだなぁ。こっちの方が良さそうだなぁ」と思っていても、それを口に出してスタッフに説明しても、ひとまずの「理解」はしてくれるかもしれませんが、腹の底から「納得」はしてくれません。なぜなら、自分達で気づいていることではないのですから

 最悪なのは、スタッフが出したアイデアに対して「たぶんこっちの方が良いよ」と理解してもらった上で実践してもらい、結果が出ない、というパターンです。これをやってしまうと、経営者や事業責任者への信用がガタ落ちになってしまいます。「そっちよりこっちの方が良い」というのは、「こっちの方が成功しそう」ということであって「こっちだと必ず成功する」というわけではありません。ただ、上司が出したアイデアですから、どうしても「こっちだと必ず成功する」に聞こえてしまうわけです。自分達で決めていない「やらされ感」のある仕事だと、さらに成果への期待感が助長されます

 「そっちよりこっちの方が良い」と思っていても、結果がどうなるかは所詮わからないのです。人材育成という観点からいえば、実践する当事者が決断するのがセオリーです。経営者や事業責任者が考えるべきなのは、「そっちよりこっちの方が良い」という考えよりも、その当事者が決断したことが失敗した場合、どのくらいのリスクがあることなのか、そのリスクのセーフティーネットを事前に貼っておくことができるのか、それをいつ誰がどのようにやるのかを考えておくことです

 それともうひとつ、その実践を行うことで、さらに事業を推進するために「どのような知見を得ることができるのか」です。これは「定性的」な情報でも、「定量的」な数字でもどちらでも構いません。たとえ、失敗したとしても、「何がわかるのか」が重要です。事業を成長させていくということは、「わからない」ことを日々の実践によって潰していく作業に他なりません。本当に困るのは、売上があがらないことや赤字であることではなくて「わからない」ことなのです

 ということで、現場のスタッフのみなさんに実践してもらうため、そして、その実践からできる限りの学びを得てもらうために「自分達で決めたことをやってもらう」、「自分達が気付いている課題に取り組んでもらう」のふたつが大切だということを書きました。あくまでコンサルタントの視点ですが、弊社のコンサルティングを進めていく中で、あと3つくらい大切なポイントがありそうなので、機会があればまた書きたいと思います。

 とにかく大切なのは、実践をする当事者である現場のスタッフから、「引き出す」、徹底的に「引き出す」ことだと思います。それが自主性に繋がり、自分を省みることに繋がり、仕事力のアップ、ひいては会社力のアップに繋がっていくはずです

 おわり。