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前回は、現場のスタッフに「実践してもらう」ためのポイントのひとつ目として、「自分達で決めてもらう」ということについて書きました。経営者や事業責任者が出したアイデアは、どうしても場の優先事項になりがちです。上司の意見に食い下がってまで、自分を主張する人は少ないですし、「自分のアイデアではない」前提で実践を行った方が、結果が出なかったとしても、言い訳をすることができます。本来は、自分で考え、自分で実践し、自分で検証して、たとえ失敗しても「この方法は失敗だとわかった」と説明すればいいんです。説明は言い訳ではありません。これは前進です。
もうひとつ、「自分達で決めてもらう」ことが大切な理由として、「本気度」が少ない仕事は成果を正確に検証できない、ということを書きました。人が決めたアイデアは、どうしても「やらされ感」のある仕事になってしまいます。これでは、心から仕事に取り組む姿勢にはなりにくいものです。自然と、「本気度」の低い仕事になってしまいます。本気度は、定量的に数字で見えるものではないですが、(もちろん計測法がないわけではないですが)「人が決めた」ことより「自分達が決めた」ことの方が、本気度が高いことは間違いないでしょう。一定以上の本気度で取り組んでいるからこそ、実践した施策を定量的に評価し、過去と現在のデータの比較をすることが可能になるわけです。
そして、今日ご紹介するのが、「自分達で気づく」です。この、「自分達で気づく」は、「自分達で決めてもらう」ともリンクしています。自分達でその「問題」に気づいたことでないと、本気度のある仕事にはならないということです。たとえ、実践するアイデアに現場のスタッフが納得していたとしても、それはあくまで「理解」でしかありません。現場で動く人達が、腹の底から「それが必要だと思っていた」というように思わないと、これも本気度の高い仕事になりません。経営者や事業責任者のアイデアは優先されがち、と書きましたが、たとえ経営者と事業責任者が自分のアイデアを懇切丁寧に話して「理解」してもらったとしても、期待通りに「実践」されるかは、また別の問題なのです。
では、本質的に必要なことは何かといえば、「自分達で気づく」ための環境づくりです。コンサルティングとしては、いかに現場のスタッフから「引き出せるか」ということがポイントにはなるのですが、現実的に「自分達で気づく」ために大切なのは、「アイデアをたくさん出してもらえ、たくさん実践してもらえる」場ということでしょう。そのためには、アイデアを出してもらうハードルを下げることと、実践してもらうことのハードルを下げる必要があります。
「アイデアを出した人が責任を持って実践する人」と定義する経営者や事業責任者がいますが、著しくモチベーションが高い組織だったり、優秀な人間だけが集まっている組織だったり、はたまた市場環境に風が吹いていて何をやっても「成功しやすい」状態にある組織だったりしないと、現場のスタッフにとっては厳しい要求になります。「アイデアを出す」「実践する」をいったんふたつのフェイズに分けて、まずは前者の「アイデアを出す」から活性化していくことが重要ですね。もちろん、後者の「実践する」の方がスタッフにとってよりハードルが高いのは言うまでもありません。しかし、あくまで前者が盛り上がってこそ後者があり、前者に「自分達で決めている感」がなければ後者のミーティングは価値のないものになってしまうことになります。
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