著者:石田 麻琴

ECマーケにおける「良い商品」の考え方とつくり方・3【no.2108】

 ECマーケにおける「良い商品」の考え方とつくり方。

 初回のコラムで、ECにおいていい商品とは「いまお客様に探されている」かつ「いまお客様に購入されている」商品であるとお話ししました。2回目のコラムでは、「自社の取り扱う商品」がお客様に探される商品なのか、そして「いまお客様に探され、購入されている商品」をどうリサーチすればいいのかについてお話ししました。

自社の中から「良い商品」を見つける

 自社のECサイトで販売している商品の中から「良い商品」を見つける。今回はまずここから入っていきます。

 自社のECチームが自信をもって発売した商品があった。しかし発売してみると動きが悪かった。むしろその廉価版の商品の方がお客様からの反応がよかった。ECのマーケティングを展開しているとよくあるケースです。ここで学ぶべきは、「商品の良し悪し」が実売につながるわけではないことです。自信をもって発売した商品が売れない場合もあるし、自信のない商品が売れることもあります。

 ポイントは「需要と供給」のバランスにあります。世の中のバランスというよりも、インターネット上でのバランスと考えた方が現実的です。自信をもって発売した商品は「商品はよかったが、供給がすでにあった」。廉価版の商品はネット上での「需要と供給」のバランスが結果的によかった。こう考えるのが良さそうです。

「良い商品だから売れる」は間違いです。「需要と供給」のバランスが良いから売れるのです。この「需要」という言葉こそ、初回に紹介した「お客様に探されている」が意味するところに他なりません。

需給バランスを読む

 では、「需要と供給」のバランスをいかに見極めればいいのか。前述した例ならば、「自信がある商品」と「廉価版の商品」の需給バランスは事前に読むことができなかったのか、という話です。

 前回のコラムにも少し書きました。有料のツールや無料のツールを使って、ある程度需給バランスを予測することが可能です。有料のツールの場合、どの商品が月間でどれくらいの「売上」「販売数」かを知ることができます。極端にいえば、有料のツールを使って月間の「売上」「販売数」を調べた上、その商品よりもスペックの高い商品を企画し、市場に投下すれば、その時点では確実に近しい売上が取れるはずなのです。

 このスペックが意味するところは、「機能性」「ブランド性」「ファッション性」などです。ターゲットの商品よりも少し秀でる部分があれば、「売上」「販売数」をこちらに引っ張ってこられる可能性があります。ただ、1つだけ外してはいけないポイントがあります。「販売価格を上げない」ことです。つまり、売価をターゲットと同じにしたまま、スペックだけを上げるのです。

価格を変えると需給バランスが変わる

 現実的に考えれば少し難しい課題でしょう。スペックを高めようとすれば原価が上がるのは当然です。原価が上がれば、基本的には売価に跳ね返さざるを得ません。特別な理由や仕組みがあれば別ですが、現実的には少し難易度の高いアプローチになります。しかし、「販売価格を上げない」ことが大切なのです。

 それはなぜか。販売価格を上げると、新しい需給バランスの中での勝負に入ってしまうからです。ターゲットの商品が売れていたのは、販売価格とスペックとの需給バランスからです。商品のスペックを上げて、販売価格を上げたとなれば、また異なる競合商品が現れます。これが新しい需給バランスの中で勝負しなければいけなくなる所以です。あくまで、販売価格はそのまま、スペックを上げてでいくしかありません。

 少し値下げをすると爆発的に売れるようになる商品があります。これも需給バランスの問題なのです。だから値付けってめちゃくちゃ難しいし、奥が深いんですよね。