EC事業の成長のポイントはデータ活用にある。ECサイトの改善施策における成果データを分析し、結果の良し悪しをみる。定量的なデータから成果レベルを判断して、次の改善施策をきめる材料にする。この繰り返しがEC運営といっても過言ではない・・。
わけなのですが、困ってしまうのはデータ活用のための改善指標です。とくに、「割り算」の成果指標の捉え方は難しいのではないでしょうか。
「足し算」のデータはわかりやすい
改善指標となるデータ項目にはふたつの種類があります。
ひとつは「足し算」のデータ。ネットショップにおける「売上」「セッション数」「ユニークユーザー数(UU数)」「注文件数(CVR)」。これらは足し算で計算される「積み重ね」のデータになります。
もう一方で、「割り算」のデータがあります。ネットショップにおける「CVR(コンバージョン率・転換率)」「直帰率」「離脱率」「リピート率」。これらは割り算で計算される「パーセンテージ」のデータになります。
EC事業を成長させる際、「足し算」のデータは数字が大きいほど良い、という認識で問題ありません。月商100万円のネットショップは月商1,000万円を目指します。セッション数が10,000セッションのネットショップは100,000セッションを目指すわけです。改善施策の成果指標としてわかりやすい数字です。
「割り算」のデータの見極め
では、「割り算」のデータ。これは大きいほど良いといえるのでしょうか。ここが成果指標として適当か否かのポイントです。
たとえば「CVR(コンバージョン率・転換率)」です。CVRが5%だった商品がCVR10%に成長したとします。いまここで「成長した」と表現しましたが、数字が伸びることは一見良いことです。しかし、「割り算」のデータの場合、数字が伸びることが一概に「良いこと」といえないのが実のところです。
CVRは「注文件数(CV)÷セッション数」で計算することができます。CVRの数値が5%から10%に増えた場合、いくつかの可能性が考えられるのです。
ひとつはセッション数が一定で、注文件数(CV)が伸びた場合です。これはネットショップでいえば商品や販促、ページ改善などの成果を意味します。同じセッション数にも関わらず、注文件数(CV)が増えているのです。CVRの伸びは「良いこと」と素直に捉えることができます。
もうひとつが厄介です。実は注文件数(CV)が変わらず、セッション数が減ることでCVRが伸びるケースがあるのです。
「リピート率」より「リピート数」
注文件数(CV)が変わらず、セッション数が減ってCVRが伸びた。はたしてこれは「良いこと」なのでしょうか。「良いこと」ではなさそうですよね。でも、もしもこれが「広告からの流入(セッション)を減らしたけど、CVは変わらなかった」だとしたら、成果指標としてはどうなるでしょうか。これって「良いこと」ですよね。
というように、です。「割り算」で計算されるデータは中身や背景をじっくり見ないとその成果指標としての判断ができません。「平均滞在時間が減った」は悪いことのように思われがちです。しかし、「お客様がすぐに欲しいモノを見つけられるようになった」というポジティブな原因かもしれないのです。こうなると「平均滞在時間が減った」は良いことですよね。」
ネットショップの改善指標として、「CVR」「直帰率」「離脱率」「リピート率」など「割り算」のデータはめちゃくちゃ難しいと認識しておくことが大切です。「割り算」のデータはとても複雑なのです。「リピート率」を成果指標として追うより、「リピート数」を追った方がはるかに認識が深まり、次の改善施策の決定材料にしやすい。このことをおぼえてもらえればと思います。