EC事業を継続していると「チャンス」は突然やってきます。そのチャンスの「理由」がわかることもあれば、わからないこともあります。チャンスには「素直に」従うことが大事なのではないでしょうか、という話です。
「気づきやすい」チャンスもある
明確にチャンスがやってきたことがわかる場合があります。たとえば、自社のEC事業で販売している商品がメディアに紹介された。新しい健康食品のトレンドとして情報が発信されれば、地道に販売をしていたEC事業者にとっては大きなチャンスになります。少し前でいうと「アサイー」とかですね。
アサイーはすでに定番の商品として様々なところで売っています。知らないという人の方が少ないかもしれません。「ポリフェノール」を豊富に含んだフルーツとして人気になりました。老化や生活習慣病の予防が期待される食べ物らしいんですね。元々、ハワイには「アサイーボウル」というスイーツがあり、こちらも人気に。
こういったトレンドは露骨にEC事業のチャンスになります。そして、お客様の注文データやお問い合わせにも反映されやすいので、「気づきやすい」チャンスといえます。「わかる」チャンスはいいとして、問題は「わからない」チャンスです。
終わった後に気づく「チャンス」
世の中には「わからない」チャンスがあります。過去を後から振り返ったときに「あれって、実はめちゃくちゃチャンスだったのかもね」というやつです。チャンスがきている最中には気づかず、チャンスが終わった後に気づくのです。「あそこは結果的にこうしておけばよかった」と。
当然、「チャンスがきている=自社のEC売上が伸びている」わけです。ECの売上が伸びていることには、何かしらの理由があります。ここはあくまで経験上ですが、「わからない」チャンスを逃すのは過信です。売上という結果が出ていることを「自分たちがおこなっている施策が正しい」と思いこんでしまうのです。
もちろん、自分たちの施策がお客様にヒットしているからこそ売上は上がります。しかし、もうひとつの観点を加えなければいけません。自分たちの施策がお客様の「タイミング」にヒットしている、と考えるのです。つまり、「自分たちの施策の精度が高い」という評価だけではなく、「タイミング」を評価するのです。
まったく逆の路線に切り替えたEC事業
ここで実際の経験をひとつ紹介します。
10年ほどEC事業を展開してきた企業です。それまで年10%~15%と、小さな額ながらEC事業の年商を伸ばしてきました。あるとき、新規顧客に向けた値引きキャンペーンが当たり、昨対300%の月商を記録しました。翌月・翌々月も好調は続き、結果、前年比170%の年商実績が出たのです。
翌年のEC事業の方針として打ち出したのは、客単価を上げるためのブランド強化路線でした。新規顧客は自分たちの施策でそれまでどおりとれると勘違いしてしまったのです。結果、高価格帯の商品はお客様に売れず、新規顧客はさして増えず、成長が鈍化してしまいました。ショップとして右往左往している様子が、おそらくお客様にも伝わったのではないかと思います。
チャンスには「素直に」従うこと
いま思えば、昨対300%の値引きキャンペーンは「施策とタイミングがマッチした」大きなチャンスだったということです。翌年も「タイミング」を活かし、新規顧客獲得に徹底した戦略を打つべきでした。自社の「施策」を評価し、「タイミング」を評価しなかったことが「今年は客単価を高くしよう!」の方向に進んだわけですが、まだそのフェイズは早かったわけです。
チャンスには「素直に」従うことです。自分たちで決めた「施策」ではないところに、チャンスの要因がある可能性もあります。困ってしまうのは、後からチャンスだったことに気づき、過去と同じ施策を打ったとしても「タイミングが異なるので当たらない」ことです。商売は「タイミング」なのです。