Eコマースの売上の公式。「アクセス数(セッション数)×転換率(コンバージョン率)×客単価」が一般的です。もうひとつの視点。「商品力×提案力×集客力」の考え方を持つことが大切です。
商品力×提案力×集客力=売上
「アクセス数×転換率×客単価=売上」の公式は定量的なものです。アクセス数も転換率も客単価もECのシステム、自社のDBから抽出することができます。各数値項目がアップすれば結果としての売上もアップすることになります。「公式」として理解しやすいものでしょう。これに対して「商品力×提案力×集客力」は、「定性的」な公式といえます。
ネットショップで販売している商品力は数値で表すことができないものです。提案力も集客力も同様です。「このショップの提案力は100だ」「こちらは80の集客力だ」。というように、定量的に表現ができるものではありません。定性的に「商品力×提案力×集客力=売上」である、そんな認識をしてみてください。
EC事業の最重要な項目は「商品力」
この「商品力」「提案力」「集客力」の3つの項目。その重要度は横並びではありません。「商品力=提案力=集客力」ではなく、「商品力>提案力>集客力」になります。EC事業を成長させる上で最重要な項目は「商品力」です。プロのカメラマンに商品撮影をお願いしたとしても、マスメディアに広告を出稿したとしても、「商品力」が弱ければ売上があがることはありません。厳密にいえば、売上はあがっても利益が取れない、EC事業は成長しない。この表現の方が正しいかもしれません。
「商品力」が圧倒的に重要。この感覚は「アクセス数×転換率×客単価」の公式からはいまいち伝わってきません。「商品力×提案力×集客力」の公式を知ってもらいたい理由はまさにそこになります。
機能性×デザイン性×ブランド性
では「商品力」を構成するものは何なのか。商品力を因数分解すると「(機能性×デザイン性×ブランド性)×価格」だと考えられます。
まず「機能性」です。たとえば従来の製品よりも処理スピードが2倍速い。従来の製品よりも音声の種類が多い。市場の商品よりも柔らかい。これらは機能性です。それまでの市場の商品に比べて機能性が高ければ「商品力が高い」という判断ができます。もちろん、Eコマース市場における「商品力」、従来商品との比較における「商品力」で問題ありません。
そして「デザイン性」です。新しい製品はまず機能性が追及されます。ある程度市場ができてくるとデザイン性が重要になります。まずデザイン性は多くの場合、機能性よりも後にくるということです。男性が使っていた商品を女性も使うようになると、途端にデザイン性が商品力に関わる。よくあるパターンのひとつです。
最後に「ブランド性」です。他社製品に比べて機能性はあまり変わらない。さらに、デザイン性もむしろ他社製品の方がいいくらい。しかし、製品にブランドロゴがひとつ付いているだけでどこかその商品を選んでしまう。そんなことがあるはずです。ブランド性は機能性・デザイン性の後についてくるものですが、商品力に影響をおよぼします。
「いいものだから売れるはず」はない
「商品力」の因数分解として「(機能性×デザイン性×ブランド性)×価格」としました。機能性・デザイン性・ブランド性の3つを掛け算したものを(括弧)でくくっています。そして(括弧)の外側に「価格」を入れました。価格は商品力を構成する要素として、重要な要素です。しかし機能性・デザイン性・ブランド性と並列になるものではありません。価格は「絶対的な存在」です。
なぜならば、お客様のお財布の中身は基本的に一定だからです。ショッピングへの関心や意欲についても一定です。仮に、「機能性×デザイン性×ブランド性」が高かったとしても、価格が自分の予算に合わなければ絶対に買わないのです。ですから、「いいものだから売れるはず」はありえません。
あくまでお客様にとって「商品力」は相対的なものです。市場や競合を比較するからこそ「商品力」を判断することができます。機能性・デザイン性・ブランド性・価格のすべてで勝つ必要はありません。ただし市場の平均レベルに揃え、加えてどこを高めるか。それを考えていくのです。