著者:石田 麻琴

マーケティングの変化をみてECを読み解く(後編)【no.1960】

 ECのマーケティングの変化をテーマに書いている話、後編です。(前編はこちらです)

内部に目を向ける時期がやってきた

 2011年前後に流行りはじめたSNS。ECという「物販」には期待どおりに寄与しませんでした。SNSで物が売れる?というマーケティング手法は確立しなかったんですね。ネット広告の効果も落ち着いて、SNSもお客様に購入いただく手段としてはまだ弱い。2011年~2015年くらいまで、ECのマーケティングは模索の時期に入ります。

 ただ、このような状況になったことで、ECのマーケッター(インターネットのマーケッターでもあると思います)がより内部に目を向けるようになりました。そもそも売れる商品をつくらなければいけないのではないか。お客様にきちんと商品の良さを伝えられているだろうか。もっと専門性のあるオンラインショップをつくらなくてはいけないのではないか。このように土台に目がいくようになったんですね。

 ECが「ネット上で集客をして決済をする」という形式から抜け出しはじめたのもこの頃。リアルのお客様にネットでも買ってもらう。ネットのお客様にリアルの営業をする。インターネットを活用したさまざまな手法が生まれてきたのもこの頃だと思います。マーケティングに対する閉塞感から、根本的な情報活用のアイデアが出始めてきたんですね。

コンテンツという言葉が多く聞かれるように

 この流れで新しく生まれてきたマーケティング手法がコンテンツマーケティングです。オウンドメディアの構築、情報発信みたいな表現をされることもあります。自社の商品の目的・用途・使い方を潜在的なお客様にきちんと伝えていこう、という動きですね。

 まず情報発信として検索の対策にもなるテキスト軸のメディアがトレンドになりました。その後動画を中心としたコンテンツマーケティングが主流になっていきます。Youtubeが活性化してくるのもこの頃から。いまのマーケティング手法のトレンドはこのあたりからきているのではないでしょうか。

 やっと主流になりつつあるのが、10年前に期待されたSNSのマーケティングです。Twitter、Facebookという当時トレンドだったSNSではなくて、Instagramという当時はなかったSNSがECのマーケティングの主流になっているのが面白いところです。インスタライブを使ってECの担当者やブランドの担当者が直接お客様に商品を紹介。そしてお客様はオンラインショップにやってきて商品を買う、という流れ。

SNS活用は導線を根本的に変える

 このSNSを活用したマーケティングは今までの導線を根本的に変化させます。SNSを活用したマーケティングではオンラインショップに必要な機能は「決済機能」です。モールでECをやろうが自社サイトECをやろうが、関係がなくなってくるんですね。いわゆるインスタントカートというジャンルのECシステムがありますが、それでも全く問題ないわけです。

 また近年の大きな流れの変化です。コロナ禍により約10年ぶりにECの「需要と供給」が変化する機会があったことです。2010年を過ぎたころから供給が圧倒的に伸びる状況が続いてきました。この2年間で「需要」側が伸びるという変化があったことは今後のマーケティング上押さえておかなければいけないことですよね。さて、今後のECどうなるものか。

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