(こちらは2021年公開のコラムです)
前回コラム(no.1913)のつづきです。
「コンサルタントが教える!Eコマース成長の法則」というテーマで連載をしています。前回は、「データ活用を身につける」についてご紹介しました。今回は「あまり意味のないデータの分析は避ける」についてお話します。
Eコマースの運営業務は多岐にわたります。「やること」を設定しすぎると仕事の量は無限になってしまいます。やることよりも「やらないこと」を設定して、より売上につながる仕事に徹底していかなければいけません。前回の「データ活用」の話につづいて、データ関連の話を紹介していきます。意味のないデータについては気にしないことが大切です。
売上やアクセス数(アクセス人数やセッション数でもほぼ同じ)や受注件数といった数値項目は日々の業務の成果として気にしながらEコマース事業を進めていきたいところですが、転換率(コンバージョン率)や客単価については、少しその重要性を整理した方がいいかもしれません。売上・アクセス数・受注件数と転換率・客単価、これらの数値項目の「違いはなにか?」と聞かれたとして、なにか思い浮かぶことはあるでしょうか。
そうなんです。売上・アクセス数・受注件数という数値項目は積み重ねのデータであるのに対して、転換率・客単価という数値項目は「割り算」のデータなんですね。転換率ならば「受注件数÷アクセス数」で計算ができますし、客単価ならば「売上÷受注件数」で計算することができます。このような「割り算」で計算するデータの難しさはなにかといえば、「分母と分子の動きで結果の数字が変わってくる」ということなんですよ。
売上・アクセス数・受注件数のような積み重ねの数値項目は、Eコマース事業においてその数字が高ければ高いほど良いはずなんですね。売上の数字もアクセス数の数字も受注件数の数字も高ければ高い方が良い。ただ転換率や客単価は一概に高ければ高いほど良いとは言えません。世の中的には「コンバージョン率が2倍に!」みたいな売り文句が飛び交ってたりするんですけどね。
たとえば転換率(コンバージョン率)が5%のネットショップと2%のネットショップがあったとします。この数字だけをみると間違いなく5%のネットショップの方がいいね、という話なんですけども「受注件数÷アクセス数」の割り算をみてみると、前者が「20件÷400」後者が「50件÷2,500」だった場合どうですかね。前者の転換率5%のネットショップよりも、後者の転換率2%のネットショップの方が受注件数もアクセス数も多いので「良い」みたいな話になってきませんかね。
さらにここで話は終わりません。前者の転換率5%のネットショップは平均の客単価が1万円、後者の転換率2%のネットショップは平均の客単価が2,000円だとしたら、話はどうなるでしょうか。前者の売上は「1万円×20件=20万円」後者の売上は「2,000円×50件=10万円」になります。実は前者の方がアクセス数も受注件数も低かったけれども、売上は多かったってことなんです。まあ、この部分はひとまず良いとして、転換率・客単価という数値項目はやっぱり「分母と分子の動きで結果の数字が変わってくる」ので侮れません。
Eコマースのマーケティングの指標として考えるならば、転換率や客単価は「割り算」の数値項目なのでそこまで売上・アクセス数・受注件数に比べると重要度は若干低いですが、それでも「日々の原因・要因」を整理するための大切な材料になります。巷でいわれているほど重要度が高くない数値項目は「離脱率」や「直帰率」です。これらは「割り算」で計算する数値項目である上に、対策に対する評価がしづらいのが難点です。Eコマース初期の段階ではあまり気にしない方が良いと思います。