著者:石田 麻琴

既存のマーケティングと「データ活用」の関係性【no.1881】

 ECMJはいくつか業界団体に所属させてもらっているのですが、その中のJDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)という団体で、4年ほど前からひとつの研究会のリーダーを務めさせてもらっています。「マーケティングシステム活用研究会」というちょっと長い名前の研究会です。

 マーケティングシステム活用研究会は、元々「マーケティングシステムを活用するための企業の問題点を解決する」ことを目的としていて、マーケティングシステムを活用するために大切なのはマーケティングシステムを導入する「目的や戦略」そしてそのシステムを日々運用する「組織と人材」なのではないか?みたいな話をしているんですね。

 昨年、青山学院大学大学院で後期の授業をさせてもらったのですが、そのときも「いかにデータ活用ができる人材を教育するか」という視点で講義をさせてもらいました。そして今期は社会人向けの「マーケティング領域におけるデータ活用人材の育成プログラム作成」というところを目標に研究会を進めています。研究会のメンバーは中小零細企業がECMJくらいで、あとはITを中心とした大企業の中堅幹部の皆さんという感じです。

 と、前置きが長くなってしまったのですが、先月の研究会で議題にあがった内容が興味深かったので共有させてもらいたいと思います。

 「マーケティング領域におけるデータ活用人材の育成プログラム」を作成するにあたって、「データ活用」というものの粒度が既存のマーケティングと並ぶものなのか、既存のマーケティングの中に含まれるものなのか、という議論が起こりました。この「既存のマーケティング」というものの定義もはっきりしているかというと不十分なのですが、マーケティング戦略を立てるための「4P」であったり「3C」であったり分析手法の「ABC分析」や「SWOT分析」なんかは「既存のマーケティング」に入るのではないかと思います。

 まず前提としてデータ活用の概念を紹介するとき、「マーケティング」という言葉を使うとこの「既存のマーケティング」を想像される方が多いのではないかと思うんですね。現代のマーケティングは、これまでの「既存のマーケティング」と「データ活用」の組み合わせだと思うのですが、「マーケティング=既存のマーケティング」だけのイメージをもっていると、まったく話がかみ合わないという。「データをみながら改善を加えていく」みたいな話がうまく伝わらないんですね。

 マーケティングシステムの登場によって、データ活用という概念が生まれたわけですが、データ活用とは「既存のマーケティング」で構築したマーケティング戦略を遂行・実践するにあたってその進捗をチューニング(調整)していくもの、ということなんですね。ここをしっかり伝えないと、「既存のマーケティング」とデータ活用の違いや、その関係性がわからなくなってしまう。ちなみに、「データ活用」という言葉と「データ分析」という言葉が市場に乱立している時代なのですが、「データ分析」は手法の話に近く「既存のマーケティング」の方に含まれ、「データ活用」は並列した立ち位置になると思います。

 個人的には(つまりECMJ的には)、データ活用の話をしているのにデータ分析と混同した認識になってしまったり、既存のマーケティングとの違いを表現することが曖昧になっていたりしていたので、とてもスッキリしました。もちろんECMJがクライアントのチームの皆さんに伝えているのは「データ活用」の考え方であり、マーケティングの戦略と戦術を「データ活用」によって最適に変化させていくための作法なんですよね。

 「データ活用」をあらゆる会社さんの共通認識と文化にするべく、引き続き研究会活動を進めていきますので、また折々でECMJコラムでも紹介させてもらいます。