著者:石田 麻琴

いかに経営者にEコマースの意識を高めてもらうか?【no.1875】

 先日、ネットショップ担当者フォーラムさんでウェビナーに登壇させてもらいました。私とECMJのシニアコンサルタントの武田さんとの掛け合いで、Eコマース事業の「組織・人材・仕組み」について話していく会だったのですが、ウェビナー中にいただいた質問がいくつかあるので共有したいと思います・・の3回目です。

 ウェビナーの事前の質問でもいただいており、またウェビナー中の質問でもいただいたのが「社内でのEコマース事業の立ち位置が微妙。どうすれば良いか?」という質問でした。事前の質問でいただいていたのは「もともとはメーカーの会社だがEコマース事業を始めた。ただ、BtoBの営業部隊に余計なことをするな的な感じで扱われていてEコマース事業を進めづらい状況になっている」というようなものでした。少し内容を端折ってしまってすいません。

 この「社内的にEコマース事業の立ち位置が微妙」の問題は多くの会社が抱えているのではないかと思います。BtoB向けのメーカーをやっていたり、実店舗を運営していたり、問屋さんをやっていたり、既存のビジネスを進める一方、インターネット経由の売上も、ということでEコマース事業を始めた会社さんはこの問題に悩まれます。この問題が起こる背景にあるのは「評価」の問題と「経営者の認識のゆるさ」の問題のふたつでしょう。

 まずは「評価」の問題です。たとえば、既存のビジネスで実店舗を運営しているとします。Eコマース事業をスタートするより前から実店舗の事業をおこなっているわけです。仮に、実店舗のスタッフの皆さんの評価指標が「実店舗の売上」だとすると、社内的なEコマース事業の強化は歓迎すべきことでしょうか。自分たちの評価指標は「実店舗の売上」なわけですから、Eコマースに売上を取られてしまうと思うと、社内で軋轢が生まれるわけです。Eコマース事業を進捗させるにあたってまず重要なのは社内の「評価」を整理することです。ここに手を入れずEコマース事業を強化しようとすると組織のパワーが「内に内に」向いてしまいます。

 このような「評価」の問題は、残念ながら「経営者の認識のゆるさ」から起こってしまいます。実店舗スタッフの評価指標が「実店舗の売上」であり、Eコマーススタッフの評価指標がそのまま「ネットショップの売上」になるとしたら、お互いがお互いの店舗をお客様に紹介したくない、自分の担当店舗に流し込む、というようなことが想像できないからこそ起こります。Eコマースというビジネスに対する「認識のゆるさ」です。「とりあえずネットショップを立ち上げて、売上が入ってきたらいいな」ぐらいの気持ちだと組織的なトラブルが起こります。Eコマース事業は会社全体に関わる戦略なのです。

 そして重要になるのは、「Eコマース事業に対する意識をいかにして経営者に高くもってもらうか」になるでしょう。経営者ではない責任者の方、スタッフの皆さんの側から何か仕掛けられることはあるのか、ここがポイントになると思います。

 ひとつは「VS」の構造をつくらないことです。この場合だと「経営者VSスタッフ」です。経営者にEコマース事業の組織的課題について提案する、わかってもらえない、ウチの会社はダメだ、また提案する、次第にけんか腰になる。「VS」の構造になるとたとえ中身が間違っていなかったとしても、経営者の側はどんどん頑なになってしまいます。これでは会社にとって大きな損です。

 大切なのは「同じ方向を向く」こと。講演やセミナーに参加したり、有識者の意見を経営者とスタッフの皆さんが「一緒に」聞いて学ぶ。その上で、自社のEコマース戦略をどのような方向にもっていけばいいのかを話す。「同じ方向を向く」ことで、Eコマース活用がより良い方向に動いていきます。経営者の方もEコマース事業がよくわからなくて不安なのです。一緒に「同じ方向を向く」ことができるスタッフの方を常に探しています。