マーケティングを展開していく上でのセオリー的取り組みのひとつが「前年同月データ」との比較です。ECMJのコンサルティングでも「前年同月データ」との比較をおこなうことによって、そこから改善策を探していきます。
今回は「前年同月データ」の活用についてです。
まず前提として、「前年同月データ」とは何か、という話からです。「前年同月データ」とは、昨年の同じ月のデータです。比較対象になるのが2020年の8月であれば「前年同月データ」は2019年の8月になります。2019年8月に対する「前年同月データ」は2018年8月ということになります。2020年8月と2019年8月のデータを比較することで、課題や改善策を探していくのです。
多くの場合、「前年同月データ」の活用は月初におこいます。2020年8月と2019年8月のデータを比較する場合は、2020年8月のデータが締まった2020年9月の月初におこなうということですね。月初におこなわれる理由は「同一期間同一条件」のルールを守るため。2020年8月の途中までのデータを集計して2019年8月という「前年同月データ」と比較しても、「同一期間同一条件」のルールを守っていないため比較対象になりません。データを比較するときは「同一期間同一条件」で、を再度おぼえておきましょう。
さて、「前年同月データ」の比較としてスタンダードなのが、商品・サービスの「カテゴリ別販売実績」の比較データです。Eコマースであれば商品カテゴリが対象になります。BtoBマーケティングであればサービスカテゴリが対象になることが多いでしょう。「カテゴリ別販売実績」のデータを作成する際、「売上」と「販売件数」のふた項目のデータを集計して比較すると良いと思います。Eコマースの場合は、カテゴリの「アクセス数(セッション数)」を比較対象に加えることもあります。
仮に「カテゴリ別販売実績」において「売上」だけの1項目を対象にして「前年同月データ」を作成したとします。2020年8月のデータと2019年8月の前年同月データを比較するだけで、「去年はこんなに売れてたのになんで売れなくなったんだ?」「急激にこの商品の売上が伸びているけれど、何が起こったんだろう?」というような疑問がわくはずです。この「疑問」が施策や改善策を決めるためのヒントになります。大切なのは、まず「前年同月データ」との比較のデータを作成して、それを見ながらチームの皆さんと「気づき」を意見交換することです。そこからマーケティングが始まります。
では「カテゴリ別販売実績」において「売上」の1項目に加えて「販売件数」のもう1項目を加えた場合の「前年同月データ」の活用についてです。「販売件数」の項目が増えると、これを「売上」のデータを掛け合わせることでまた新しい「疑問」をもつことができます。「売上」の増減と「販売件数」の増減がバランスしていないデータが見つかるのです。つまり「前年同月と比較して売上は伸びているのだけれども、販売件数がさほど伸びていない」「前年同月と比較して売上は変わらないのに、販売件数がとても伸びている」というようなデータです。
このようなデータを「カテゴリ別販売実績」のデータで発見した場合、その後に確認するのは商品やサービスの個別の「前年同月データ」との比較になります。商品、サービス単体での「売上」と「販売件数」の動きをみていくのです。そうすると「実は単価が安い商品の販売件数が異常に伸びていた」だったり「実は前年同月は大量のまとめ買いをしたお客様がいた」などの「データの理由」を調べることができます。これらの「お客様の動き」にマーケティングのヒントが隠されている場合があり、ここから施策や改善策を決めていくわけです。
「前年同月データ」はぜひ毎月月初にデータ分析をして、次の改善施策を検討する材料にしてみてください。