デジタルを活用したマーケティングを展開していくとき、どうしても「道具過多」になってしまう傾向があるようです。
「道具過多」の傾向は特に大手企業によくみられます。デジタルの活用の目的がマーケティングのツールやシステムを「導入すること」になってしまい、利用・活用まで至らないのです。これを繰り返すと契約期間だけが残っている「道具過多」の状態になってしまいます。
今回のECMJのテーマは「道具過多にならないための考え方とプロセス」についてです。
まず前提として最初に理解しておかなければいけないことがありません。巷、そしてECMJコラムでも「デジタルマーケティング」という言葉を使っていますが、本質的には「デジタルマーケティング」というものはありません。
「デジタルマーケティング」とは、企業のマーケティング活動の一部を「デジタル化」もしくは「デジタル活用」したものであり、いわば既存のマーケティング活動の一部の「転換」なのです。「デジタルマーケティング」という言葉を使うと、まったく新しいマーケティング手法が出てきたものと勘違いされがちですが、そこにあるのは「デジタルを使ったマーケティングアプローチ」です。
逆にいえば、デジタルを活用したマーケティングを推進し、成功させるためには「デジタルに一部を転換させるための」マーケティング活動そのものがないと成り立たないことになります。「道具過多」になっている会社さんに欠けているのは、実はこの部分なのです。大切なのは、道具を導入する前に、自社のマーケティング活動を整理し直すことです。
デジタルを活用しない、ツールやシステムを導入していない既存の自社のマーケティング活動が整理されていて、通常業務として運用サイクルが回っている状態であれば、そのマーケティングサイクルの過程の中で「この業務ってもっと自動化、最適化できないものだろうか」「このアプローチってインターネットを活用したカタチに転換できないだろうか」という話が自然とわきあがってくるはずです。
もし、自社のデジタル活用が「道具過多」だと考えられるのならば、まずはマーケティング活動を整理してみると良いでしょう。いまのお客様はどこからやってきて、どういうフローを踏んで、どうやってサービスを購入してくれているのか。いま受注をいただいている理由は何なのか、自社の勝ちパターンは何なのか。そして、その自社のマーケティングフローの中で、デジタルの「道具」はどの部分を担っているのか。
自社のデジタル活用が「道具過多」ではないと感じていたとしても、自社のマーケティングフローの中に導入している「道具」があまり登場しないならば、もしかしたらそれは現在の自社のマーケティング活動には必要のないツールやシステムかもしれません。はたまた、自社のマーケティング活動をレベルアップさせる上で「もっと活用しなくてはならない」道具なのかもしれません。
ECMJの場合は基本的に「道具」に依存しない、自社のマーケティング活動のPDCAを回すところからコンサルティングをスタートします。まずは自社のマーケティングを整理しながら見える化し、先にも紹介したマーケティングのフローを現場のメンバー全体が把握するように進捗させていきます。まずはアナログでも現状のマーケティングを全員が理解するところから、その上でのデジタルの活用です。
AI、MA、BI、WEB、CRM/SFA、EC・・などなど様々なデジタルの「道具」が今日も登場しています。人間がやりきれないことをやってくれる素晴らしい「道具」ですが、「道具」が一から十まで勝手に動いて売上をつくってくれることはありません。やはり大切なのは人間の「使い方」なのではないでしょうか。