4月上旬に緊急事態宣言が出てから10日後くらいでしょうか。私の自宅の近くにパン屋さんがオープンしました。
パン屋さんがオープンした・・といっても新装開店のパン屋さんではなく、レストランの1階を借りての期間限定出店のパン屋さんです。そこはもともと地元でも有名なイタリアンレストランなのですが、営業自粛期間中ということでパン屋さんに場所を提供したわけですね。
ちなみにこのパン屋さんは、様々な過去にも店舗とコラボレーションをしているらしく、「自粛中の店舗を利用してパンを提供」ということで夕方のニュースにも取り上げられていました。自宅近くのパン屋さんがメインで取り上げられており、私の奥様がとても感動していました。
それはそうと、この期間限定のパン屋さん、開店直後から長蛇の列で商品であるパンもすぐ売り切れます。私は初日の夕方に買いに行きましたが「いやー、こんなにお客様がきてくれるとは思っていませんでした」と店主(おそらく運営会社の社長さん)がおっしゃっていました。
自粛期間中ということもあり、街の皆さんも新しい刺激を求めていたのもあるんでしょうね。初日の夕方のニュースに取り上げられたこともあって、そこから1週間ほどのお客さんの入りはすごいものでした。私の自宅のベランダからパン屋さんが見えるので「おお、今日もたくさん入ってるな!」とついつい見ちゃうんですよね。
ただ、ブームというものは上がった分、下がってしまうもので、オープンから1週間もすると「ちょっと賑わっている」程度のお店に、そしてまた1週間もすると「普通」のお店になっちゃうんですよね。それでも他のお店と比べると「人気店」ではあるのですが。上がるスピードが速かった分、下がるスピードもある程度早いのは仕方ないのかもしれません。
オープンから3週間ほどでこのパン屋さんの「すごく忙しい」時期は過ぎてしまったわけなのですが、そうしたらパン屋さんの店員さん、何を始めたかというと「呼び込み」を始めたんですね。若い男性のスタッフが店先に立って「美味しいパンはどうですかー。焼きたてのクロワッサンが先ほど入ってきましたー」というように。
「パン屋さんで呼び込みって見たことないよねぇ」と奥様は笑っていて、私も「見たことないねぇ」と笑ってはいたのですが「パン屋さんなのに呼び込みまでしてお客様を集めることは、素晴らしい商売根性なんじゃないか」と思い始めたんですね。だって、自宅から50メートルくらいのところなんで、毎日毎日「美味しいパンはどうですかー」って聞こえるんですもん。
パン屋さんで呼び込みって「普通はやらない」じゃないですか。呼び込みというと「居酒屋」みたいなイメージがあって、他の業態だとほぼやらない。ただ、「やっちゃいけない」わけじゃないと思うんですよね。どちらかといえば「やれるんだけどやっていない」ことだと思うんです。自分から「やらない」という選択をしているだけ。呼び込みの効果はいかほどかわかりませんが、呼び込みをすることによって1件2件の注文が増える、かもしれない。
ウィズコロナ、アフターコロナのこれからの時代、「何としてでも、1件でも多く受注を取らなければいけない」というケースが増えてくると思うんですね。いままで安定した業績を挙げてこれていた企業でも。「呼び込みしよう!」というわけではありませんが、「「やれるんだけどやってこなかった」何かのタガを外さなければいけない時なのかもしれません。
このパン屋さん、5月末までの期間限定でした。オープン当初の盛り上がりもそうですし、盛り上がりが収まった後の地道な運営まで、すごく見事だなと感じます。毎日50メートル先から勉強をさせていただいているのです。