著者:石田 麻琴

社会人になってからの「勉強する」とは何か?【no.1741】

 社会人になると学生時代のような「定期的に新しいことを学ぶ場」があまりありません。

 一部の社員研修、社員教育を充実させている上場企業は十分な「学ぶ場」を用意していることもありますが、基本的には自分で新しい情報を取りにいき、新しい学びを得てきなさい、というのが会社のスタンスだと思います。変な話、仕事に必要なスキルや経験さえあれば日々の業務をこなしていくことができたりもします。

*市場の変化についていくことができるか否か

 ただ、怖いのは市場環境の変化です。インターネットの登場で様々な情報がインターネット上に移ったように、スマートフォンの登場で可処分時間の過ごし方が変わったように、市場環境の変化で「いまのスキルや経験」が不要になってしまう可能性があります。ある日突然通用しなくなる、ということはないでしょうが、スマートフォンの登場がこの10年強だと考えると(一般的には2007年の初代iPhoneだと言われている)、けっこうスッパリと市場環境は変わってしまうわけです。

 スマートフォンの登場により自社の市場が侵されたとして、会社のビジネスモデルは簡単に変えることはできなくても、「定期的に新しいことを学ぶ場」をもっていれば自分自身という個人の仕事への取り組み方を変えることができます。この「学ぶ場」というのは果たして何でしょうか。

*大人(社会人、ビジネスマン)の「勉強する」とは

 大人(社会人、ビジネスマン)になって「勉強する」ということを考えた場合、いくつかの方法が考えられます。ビジネススクールに通うのも勉強ですし、本を読んで新しいスキルを身に着けるのも勉強です。通信教育で何かしらの資格を取ることも勉強になると思います。これらの「勉強」も大変結構だと思うのですが、「市場環境の変化に対応する」ことを考えた場合、少し不十分な気もしないでもありません。

 それは、ビジネススクールに通う、本を読む、資格を取る、いずれも「どこかの誰かがすでに用意してくれたものを学んでいる」のように感じるからです。ここにはどこか「これからの先にある市場環境の変化」の匂いがしません。

 「市場環境の変化に対応する」という観点から考えると、大人の「勉強する」とは「価値観の異なる人と意見交換(ディスカッション)をする」「アートや新しいイベント(施設)を体感する」など、意見を持つことと体験をすることではないかと思うのです。こういう点でいうと学生時代の勉強とは異なりますし、仕事中に美術館にいって絵画を鑑賞していても、そこに罪悪感を持つ必要はまったく無いことになります。

*自ら「定期的に新しいことを学ぶ場」をつくる

 これらの「大人の勉強」のポイントになるのは、定期的に情報交換・意見交換のできる良いコミュニティをつくることなのではないかと思います。新しいビジネスや新しいアート、新しいテクノロジーなどに興味がある仲間がいればベターです。良い仲間とは良い意見交換ができますし、「あそこ行ってみると面白いよ」とか「あの本読んでみるといいよ」とか、良い情報をもらうことができます。それにしたがって、素直に足を運んでみたり、本を読んでみたりすればいいのです。

 そう考えると、「大人の勉強」の軸になるのは「人に会う」ことなのかもしれません。価値観の異なる多様な人と会い、話すことで「市場環境の変化に対応」できるような視野が開いてくる。といっても、価値観が異なる人=自分と合わない人、変わっている人という意味ではありません。単に、自社の人間ではない業界の仲間、異業種の仲間、スポーツなど仕事外の仲間とコミュニケーションを取ることが、イコール「勉強する」になるのではないでしょうか。