著者:石田 麻琴

技術が標準化する時代、勝ち筋は「スピード」だけになった【no.1724】

 技術が標準化する時代、勝ち筋は「スピード」だけになった。

 基本的には・・なのだと思うが、企業も人も「スピード」で戦うしかない。一部の大企業や誰しもが「ははー!(頭を下げる)」となる大先生以外は「スピード」で戦うしかないわけだ。

*顧客ニーズの変化を掴む、変化をサービスに反映させる

 中小企業が大企業に価格で勝てることはありえない。ボリュームが違う。小売り商材の場合でも原材料の仕入れの場合でもボリュームディスカウントが違う。中小企業は間接コストが少ない分販売価格に反映させられる、という考え方もある。しかしボリュームディスカウントは圧倒する。マクドナルドと同じ価格で同じ商品を多店舗で一度に出せるか。無理。

 価格では勝てないし、セキュリティでも勝てない。信用でも勝てない。相手は大企業である。資本と人財が集まっている。上場企業であれば上場基準に見合った、パブリックカンパニーとしての情報セキュリティを自ずと満たさなければいけなくなる。あらゆる人財を集結させてトラブルをカバーしようとする。中小企業とは土台が違う。

 中小企業が勝てるとしたら「スピード」しかない。どんなスピードかといえば「顧客のニーズの変化を掴み、その変化をサービスに反映させる」スピード。ひとことでいえば「変化のスピード」。これで大企業に対抗していくしかない。テクノロジーが技術を標準化させる時代、残っているのは「スピード」だけになった。

*人財は「着手スピード」を上げていく

 人財においても「若手=中小企業」「ベテラン=大企業」と考えれば、基本的に「スピード」で勝つ以外はなくなる。若手にはベテランのような経験もノウハウも築いてきた信用もない。「若さ」は武器になる部分もある。しかし新しい「若さ」が現われればいつかは失われる。「スピード」を上げ行動の回転力をひたすら上げていく以外はありえない。

 大切なのは「作業スピード」ではなく「着手スピード」になる。「作業スピード」は前述したようにテクノロジーの進化によって標準化されていく。特にニーズが強い作業ほどAIやRPAがカバーすることになる。「作業スピード」の付加価値はどんどん下がっていく。

 「着手スピード」は人間の意識の問題である。だから付加価値は下がらない。むしろコンピューターに頼る時代になったからこそ、人間の「着手スピード」の付加価値は今後さらに上がる。インターネットの登場で市場の「スピード」が速くなっていることを考えれば、これまで以上の「着手スピード=反応スピード」が求められるのも当然だろう。

*自分たちにはまず何ができるか

 「スピード」を普段の我々の仕事に落としてみる。自分たちが今日の仕事から変えられるものは「情報への反応」だろうか。コミュニケーション手段としてチャットツールを活用している会社も多い。心がけたいのは「即レス」ということになる。情報をキャッチした時点で次の情報を返すことを習慣づける。情報の回転が市場の流れを越えれば、市場をコントロールできるようになる。

 「返信はいつでも良い」という内容のメール。これは「仕事の期日までに余裕がある」ということである。メールを送信した人間が「早いレスポンスを求めていない」わけではない。むしろメールを送信したときが内容の回答が欲しいときであるはずなのだ。「了解しました」でも「少々お待ちください」でも良い、「即レス」は情報の回転を上げる。「メールの内容を確認した」ことも相手に伝えられるはずだ。

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