著者:石田 麻琴

「適切な量」と「適切なスピード」を外すと、良い文化が根付かない【no.1723】

 物事には「適切な量」や「適切なスピード」というものがあって、これを外してしまうと物事自体が「止まってしまう」結果になってしまうこと、について書いていきたい。

*会社のコラムを定期的に更新することになった

 実際にあった話なので、少し内容を変えて紹介をする。

 この会社ではホームページに定期的にコラムをアップしていた。「お客様のお悩み」に関するコラムを週に2本アップしており、その数は100本近くになっていた。インターネットからの検索対策を強化するにあたり、ひとつの課題が浮かび上がった。コラムの「タイトル部分」が定型的なタイトル名と通し番号で構成されており、コラムの内容を示唆するものではなかったのだ。

 ECMJ的な感じで例にすると「マーケティングのよもやま話。その89」というようなタイトルになっていたわけだ。ご存知のとおり、タイトル部分は検索対策をするにあたっての最重要部分のひとつ。検索エンジンの検索結果画面にもリンクページとして表示される。コラムの内容を示唆するようなキーワードを埋め込んだタイトルに変更していこう、という話になった。

 コラムを読んで適切なタイトルを考えコラムページを更新する。この作業をミーティングに参加しているメンバーで週に2本ずつ割り振って更新を進めていくことになった。参加メンバーは5人。週に10本、月に40本のコラムが更新される計算になる。

*週に2本の更新を週に4本に変えたところ

 コラムを読んで適切なタイトルを考えコラムページを更新する。作業自体はそれほど負荷の大きいものではない。ただ、当然ながら現状の通常業務にプラスオンで乗っかってくる仕事にはなるので、若干の「面倒感」はあった。それでも更新するのはたった2本。参加メンバーのひとりが「今週分のコラムタイトル2本を更新しました」とメールに流すと、それをきっかけにして他のメンバーも更新を始める。そんな状態が数週間続いていた。

 何回目か後のミーティングで参加メンバーのひとり、ミーティングのメンバーの中では一番の上長が「2本ずつより一気に4本ずつにしましょうよ」という提案をした。「2本ずつでもいいのでは?」という場の雰囲気が一瞬流れたものの、発言をしたのが上長だったこともあり「じゃあ、今回は4本にしましょう」ということになった。

 はたしてどうなったか。コラムのタイトルの更新が止まってしまったのである。上長からも「今週分のコラムタイトル4本を更新しました」というメールが流れてこなくなった。「コラム更新」という仕事と参加メンバーの意欲のバランスにおける「適切な量」と「適切なスピード」を2本から4本にしたことで外してしまったわけだ。

*継続できる「適切な量」と「適切なスピード」を探す

 大切なのは「継続すること」である。今回、「適切な量」と「適切なスピード」を外してしまったことで、ふたつのことを失ってしまった。ひとつはコラムの更新を継続し、既存のコラムの検索対策を完了させるということ。これは仕事の目的だ。もうひとつは、ミーティングで合意したことは「必ず決行しなければならない」という文化である。これは組織の目的ということになる。

 短期的にみれば前者の方が問題に感じられるが、中長期的にみれば後者の方が問題である。コラムの更新数が2本なのか4本なのかどちらが適切なのかという問題はあるが、そもそも「決めたことでも余裕がなければやらなくてよい」という例外ができてしまうことがマズいわけだ。

 物事には「適切な量」や「適切なスピード」というものがある。仕事に取り組む際の組織のレベル、メンバーの意識を読みながら「継続する文化」をつくっていきたい。「適切な量」や「適切なスピード」を外してしまい、「始めて終わらせて」を何度も繰り返している会社も多いのではないだろうか。