著者:石田 麻琴

「市場規模」があるということは、競合がいるということ【no.1675】

 「市場規模」があるということは、競合がいるということ。(2018年10月のコラムです)

 友人がとあるベンチャー企業に誘われているというのです。ちなみに具体的な事業内容はわかりません。そのベンチャー企業のテーマ・狙いのようなものは聞きました。フリーランスの仕事の大部分をやめなければいけなくなるため迷っているようです。まあ、私が彼にアドバイスできることはありません。

*「市場規模」があるからベンチャーをする、という考え方

 中途半端な情報しか得ていない私が意見するのは良くありません。ですから「うんうん、そうなんだ」と聞いていた。ただ、話を伺う中で気になったことがありました。それは「市場規模」の話です。

 このベンチャー企業ですが目標数字を大きく掲げています。「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」の売上を目標にしているというのです。創業者にバックグラウンドがあったり、すでに得意先が決まっていたり。何かしらの「伸びる理由」もあるようです。さらに事業を展開する領域に100億円、1,000億円それ以上の「市場規模」がある。だから「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」の成長に自信を持っているというのです。

 しかしこの「市場規模があってニーズを提供できれば、ガッツリ成長できるはず」という考え方。いかにも会社のお金で社会人ビジネススクールに通ったサラリーマンが言いそうです。

*「市場規模」がある時点でカテゴライズされている

 「市場規模があってニーズを提供できれば、ガッツリ成長できるはず」。だから「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」は可能である。この考え方はいくつかの点でズレています。

 まず「市場規模」が露見している時点でいまから取り組んでも急成長は見込めません。「市場規模」が計算できるのは、市場というジャンルがカテゴライズされているからです。そしてそのジャンルは、過去のどこかのベンチャー企業が作り上げてきたものです。ジャンルと市場規模はあるが、それを埋めている企業がない、はありえません。「市場規模」があるということは、先を行っている競合がいるということです。

 「市場規模がある=急成長が見込める」は嘘ではなりません。しかし先を行っている競合がある時点で「急成長する」は非現実的です。もし「急成長が見込める」可能性があるとすれば、全く逆でしょう。「市場規模」が計算できない、いまだカテゴライズされていない(既存の枠ではカテゴライズできない)仕事ならば、急成長をする可能性が十分あります。

*すでにカテゴライズされている時点でスモールスタートになる

 もしすでにカテゴライズされている「市場規模」にチャレンジするとします。その場合、競合がある中で「違い」「差別性」を出さなければいけません。「違い」はスモールスタートです。現状の市場で満たされきれていない小さなニーズ。または時代の変化から薄っすらとみえるニーズ。これらをいち早く捉え、専門性を出して「小さくてもキラリと光る」ダイヤモンドのような事業を目指すのです。大きなニーズはすでに先行者が満たしています。

 そう考えるとさらに「3年後に100億円」「5年後に1,000億円」は非現実のように感じます。現実には「違い」となる小さなニーズを拾う。そして新しい市場の可能性を探し、運とタイミングが合えば急成長するか、でしょう。そもそもベンチャー企業・中小企業であれば「市場規模」は無限大です。「市場規模」という言葉はなにかの理由づけでしかありません。

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