インターネットのマーケティングほど、競合分析が重要なものはない。ご存知のとおり、お客様(厳密にいえば、お客様「候補」の方)はインターネットでのサービスの比較、商品の比較、会社の比較をすることが容易だからだ。
*問い合わせをするお客様は他でも問い合わせをしている
インターネットの集客の対策をすると問い合わせが増える。WEBサイト経由の問い合わせを増やすために、インターネット広告やコンテンツマーケティングなどの集客戦略をおこなっているわけだから、問い合わせ自体が増えることは望ましいことなのだが、そこでは「自分たちが理想としていない」問い合わせも増える。
それが「他でも問い合わせをしているお客様」である。この「他でも問い合わせをしている」だろうお客様は、サービス提供側つまり我々からすると非常に「ライトなお客様」に見える。お問い合わせ内容も「こういうことできますか?」くらいの感じですごくシンプル。表現は少し悪いが、インターネットからの問い合わせに「慣れている」感がある。
*問い合わせとそのリアクションから自社に何を感じるか
こういった「慣れている」感のある問い合わせをするお客様は、相談内容が簡潔だったり、見積もりだけを要求してきたりする。そして要件を返信すると、これまた「ありがとうございました」程度の非常にライトな返信がくる。場合によってはメールの返信さえない。電話をしても話すのが面倒なのか出てくれなかったりする。
インターネットからの集客を強化した結果、「自分たちが理想としていない」お客様からの問い合わせが増えてしまったと思うかもしれない。ライトなお客様、見積もりだけを要求するお客様、知りたいことだけを聞くお客様というように、ネガティブな印象が残る。ただ、ここで少し立ち止まって考えてみてもらいたい。「自社のサービスは他社と比較され、負けてしまっているのではないか?」ということを。
*集客戦略を強化した結果、比較の対象になったということ
WEBサイトの集客戦略を強化する以前からきていた「自分たちが理想としている」問い合わせは、すでに自社のことをどこかで知っているお客様からの問い合わせである可能性が高い。アナリティクスでの検索キーワードをみればわかるとおり、集客対策を施していないWEBサイトの流入キーワードは会社名やサービス名ばかりである。直接的な検索でやってきたお客様は確度も高く「取引をする前提」で問い合わせてくれた可能性もある。これが「自分たちが理想としている」お客様のベースになってしまっている。
集客戦略を強化した後に問い合わせをしてくるお客様は、必ずしもこの限りではない。事例やコラム(ブログ)やSNSやインターネット広告から自社のことを「初めて」知ったお客様が多分に含まれているからだ。そして自社のことをインターネットで知ったお客様は、当然他社のこともインターネットで知ろうとする。これがライトな問い合わせや「自分たちが理想としていない」お客様のイメージに繋がっていくわけだが、ポジティブにいえば「集客戦略を強化した結果」自社がインターネット上での「比較の対象」になったということでもある。
*自社のサービスは伝わっているか、そこに選択動機はあるか
さて、このような「実らない」問い合わせが増えたときに考えるのは、前述したように「お客様に対する疑い」ではない。自社のサービスや商品の良さが「もしかしたら上手く伝わっていないのではないか」もしくは「他社に比べて選択動機になるものが弱いのではないか」というように、自分たちを疑えるかどうかなのではないだろうか。リアルの限られた選択肢の中から1社を選ぶのと、インターネット上にあまたある同業から1社を選ぶのは選択動機のレベルが全く違う。
インターネットは差別性・違いの市場であり、また1ジャンル1社独占になりやすい市場でもある。「自分たちが理想としていない」お客様になったつもりで、シビアに定期的な競合分析をしていきたい。「まー、たしかにこれじゃあウチを選ばないよな」に気づけるように。