(2018年10月のコラムです)
数日前のニュースでしょうか。「AIがデータ不足でピンチ」という記事がありました。今日のECMJコラムは「AIでカバーできるものとAIでカバーできないもの」についてです。
*AIはデータを「エサ」にして動く
「AIがデータ不足でピンチ」。これがニュースになっていることに少し愕然としてしまいました。AIを活用するにはその前提としてデータが必要であることは周知のことだと思っていたからです。
AIは頭脳です。頭脳を活かすための「エサ」になるのはデータです。AIはデータを食べて、行動を起こします。そしてその行動から新しいデータを取り込み、学び、AIの頭脳を進化させていくのです。ですから、順番としては「データ→AI→行動」というものがあって、行動から得られるデータが次のAIの食事になっていきます。もちろん、行動から得られるデータだけではなくまた新しいデータを食べていくことで、さらに頭脳は進化をしていきます。
良い商品やサービスがあればAIが勝手に売上をつくってくれる。AIがブームになっていることにより、そんな勘違いや勘違いを起こさせる情報が氾濫していますが、「AI→行動」ではなく「データ→AI→行動」なのです。
*データは自然に湧いてAIに入っていくものだけではない
たとえばGoogleアナリティスクスで閲覧することができるWEBサイトのデータ。これは日々自然に湧いてくるデータであり、AIのエサになってくれます。ただデータは自然に湧いてAIの食事になってくれるものだけではありません。
自社内で入力しなければいけないデータもあります。経理担当者がエクセルに打ち込んでいるデータや営業担当者が日報に打ち込んでいるデータもAIのエサになるデータです。もしも経理担当者や営業担当者のデータが紙をベースにして共有されているならば、AIで活用するためにはデータとしてコンピュータに打ち込まなければいけません。これは人間が行わなければいけないアナログの仕事です。
アナログの仕事を放棄しても定型的なデータからAIを運用することは可能でしょう。しかしそこには差別性がありません。同じAIをすべての会社が導入したとして、すべての会社の売上が伸びていくのか。もし伸びるならば、日本が不景気を脱却する方法は簡単です。
*テクノロジーが進めば、アナログに価値が出る
アナログのデータをいかにデータ化してAIに食べさせていくか。思いついた人が思いついたときにではなく、時間がある人が時間のあるときにではなく、アナログな情報を確実にデータ化していくこと。これはスキルの高さやノウハウの難しさではなく、シンプルなことを習慣として「やり切れるか」という会社組織の問題です。
社内にITテクノロジーに詳しい人が数人いればできることではありません。社員が300人いるなら300人、1,000人いるなら1,000人がこの意識をもって仕事ができているか、データ化を習慣にできているかという「数と割合」の問題です。「IT活用は会社組織の変革」であるのはここに理由があります。
*AIでカバーできるものとAIでカバーできないもの
AIでカバーできるものとカバーできないもの。カバーできるのは中間層であり、AIは上層と下層はカバーできないと考えます。
上層は高いスキルを必要とするものです。高いスキルだけではなく、人間の感情を読み取る力が必要なものについてはAIはカバーできないでしょう。囲碁や将棋やオセロのように、過去のデータをすべてエサ化できるものについてはAIがカバーしてしまいます。ここに人間の感情が紐づくと話は別です。「人間が人間を相手にしないと絶対に成り立たない」という仕事は残り続けます。
もうひとつは下層です。下層とは表現は悪いですが、内容はシンプルです。「そもそも、なぜAIを扱わなければいけないのか」「どんなAIが自分の仕事に向いているのか」これの選択と判断をするのは人間の仕事です。AIもマーケティングテクノロジーもひとつではありません。「デジタルの選択と判断」はこれからの人間にもっとも大切なスキルのひとつになるのではないでしょうか。