著者:石田 麻琴

配送料金が上がるのは困ったけど、我々にできるのは‥【no.1572】

配送料金が上がっています。もう去年から何回目になるのでしょうか。ヤマト運輸さん、佐川急便さん、日本郵便さん・・他社の動きに合わせて何段階かに分けて値上げをしています。「普通は物量が増えたらコストは探すはずなのにな・・」とか思うんですが、どうやらそうではないものらしいんですね。まあ、ここについては深く突っ込まずに。

いずれにせよ、ネットショップを運営している事業者の皆さん、そして送料の値上げ分コストを負担することになりそうなお客様(以下、ユーザー)の皆さんにとってはあまり良い話ではないわけです。

*送料無料の廃止、送料値上げの状況を洗ってみる

この数週間にレポートがあった送料無料の廃止や送料の変更についての情報をいくつかピックアップしてみます。

「セブンネットショッピングが送料無料サービスを終了。1,500円以上で送料無料だったが、全国一律で324円に変更」「ファンケルが送料を値上げ。送料無料サービスを廃止し、現在の配送料金に一律100円を上乗せ」「ニッセンが送料を改定。ネット注文は送料を140円値下げ、電話やハガキの注文を50円値上げ」「ベルーナが送料無料を廃止。5,000円以上送料無料が送料190円に」という感じ。

若干気になるのはニッセンだけネット注文の送料を値下げするところなのだが、電話やハガキの注文の送料が値上げになっているのでそこでバランスを取っている感じなのか。もしくは競合ネットショップが軒並み値上げすることを見越して逆張りで顧客を引っ張ってこようと思っているのか。

*今回の送料値上げがもたらすもの

いままで送料無料で頑張っていた大手企業が値上げに踏み切るということはさすがに配送料金の値上げが利益をひどく圧迫しているということの表れではあると思います。もう一方からいえば、ユーザー単位の利益が減っても顧客数が伸びていればトータルでカバーすることは可能なわけで、ネットショッピングのユーザー数の増加がある程度頭打ちになっていることの表れでもあるのかもしれませんね。

たとえばヤマト運輸さんでいうと、過去にはメール便で配送できていた商品が約3年前にDM便になり、さらにDM便も廃止になってネコポスになるわけです。配送料金はだいたい80円→160円→350円という感じえメール便とDM便の比較では4倍になっているわけですね。ネットショップでも販売価格500円の商品に送料が800円900円なんてところがたくさん出てきています。

スケールメリットで大量の商品を大量に販売しているネットショップは厳しくなっていくでしょうね。日用品などは(重いとかでなければ)実店舗に回帰するユーザーが増える気がします。

*配送料金への対策はいつも一緒

昨年の9月か10月にも配送料金の値上げの対策について書きました。また同じようなことを短期間で書くと思っていなかったのですが、ネットショップ運営側ができることは限られています。

自社の送料設定を変更し、ユーザーに負担してもらうようにする。自社の利益を削って送料設定をいままでどおりにする。自社の商品の付加価値を上げ利益率を保つ。データを活用した商品の調整などはあるにせよ、基本的にネットショップ運営側が対応できるのはこの3つです。そしてECMJコラムを読んでくれている方ならわかるとおり、いずれにせよやらなくてはいけないのは3つ目の「付加価値を上げ利益率を保つ」なんですよね。

大切なのは配送料金の値上げを「言い訳」にして改善を怠ってしまうことです。ゲームのルールが変わったのですから、その環境に対応できる改善を考えるのが冷静です。市場は簡単にはなくなりません。市場の変化にパニックになって撤退してしまうのはユーザーよりもネットショップ側かもしれませんよ。