著者:石田 麻琴

みんなでスタートトゥデイの「ZOZOSUIT」を応援しよう!【no.1482】

 ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ社がついにプライベートブランド(PB)を発表した。ブランド名は「ZOZO」。そして発表したアイテムは「ZOZOSUIT」というボディースーツだった。

 アパレルのショッピングモール事業を運営しているスタートトゥデイ社がPBに乗り出すという発表をしてから、「ZOZOTOWN」がどんな商品を発売するのか、様々な憶測を読んだ。私自身はてっきりユニクロでいうヒートテックのようなインナーウェアをPB化するのではないかと考えていた。

 アパレルビジネスの難しさは在庫管理である。アパレル商品の実店舗・ネットショップを運営している事業者で在庫に困っていない会社はない。特にバッグやジュエリーなどの雑貨ではないウェア系のアパレルはカラー展開とサイズ展開にやられる。人によってセンスも異なれば、同じものを着て被るのも嫌がられるため一点落とし込み型の商品企画ができない。ウェア系の中でもインナーだけは「一点落とし込み型」のマーケティングが展開できる。大量生産が可能であり、おそらくユニクロでもヒートテックは高利益率の「ドル箱商品」であるはずだ。

 当然、スタートトゥデイ社はZOZOTOWNのユーザーにおけるデザインやカラーの好み、ユーザー層、購買サイズのデータなどを有している。そのデータに適合するインナーウェア商品をPB化すれば、在庫も好回転の高利益率商品ができるはずだ。ただ懸念点は、ZOZOTOWNに出店しているブランドの売上を食ってしまう可能性があること。市場の原理とすれば「プラットフォーマー」は絶対ではあるが、それでは「三方よし」にはならない。PB化のキモはここなのではないかと素人目に思っていた。

 ところが・・!前澤社長の発想は大気圏をはるか飛び越えたところにあったわけだ。「人が服に合わせるのではなく、服が人に合わせる時代をつくる」それが採寸のためのボディースーツ「ZOZOSUIT」である。既存の市場から「美味しいところだけをいただく」なんてチンケなことは、前澤社長の頭の中にはなかったわけだ。(これまでの他のPBってのは「美味しいところいただく」なんだけどね・・汗)

 「ZOZOSUIT」には相当な投資をしているはずである。ただ物心ついて私たちがファッションに気をつかうようになってから誰しも一度はそうなって欲しいと思っていたことである。「試着しないとわからない」「Sだと小さくMだと大きい」「腕が短いのでいつも袖が合わない」。「ZOZOSUIT」のデータはZOZOTOWNの既存の商品の購入に加速をつけるだけではなく、PBのオリジナル商品の開発やオーダーメイド商品の開発にも大いに役立つ。

 また、「ZOZOSUIT」のデータはPBブランド「ZOZO」のビジネスを加速させるだけではなく、公開されるならばZOZOTOWNの既存の出店ブランドにも有益なデータになる。インターネットでの商品購入のハードルを下げるだけではなく、セグメントしたユーザー層に向けた商品開発・ブランド開発の助けにもなる。スタートトゥデイ社のPB戦略はアパレルのマーケット自体を拡大させるものなのだ。売り手よし、買い手よし、取引先よしの完全な「三方よし」である。さらに「世界よし」が加わるかもしれない。

 ECMJコラムでもZOZOTOWNの「下取りサービス」や「ツケ払いサービス」について書いてきた。その中で「Amazonができないことをする会社」と伝えてきた。他社物販がAmazon勢力に押されている中で唯一特異性を出せているサイトである反面、「Amazonにパイを食われない」という守りの「差別化生き残り」戦略と捉えてしまう部分もあった。しかし、「ZOZOSUIT」のサービスはアパレルという市場において世界を席巻する可能性を秘めている。完全なる攻め。世界への挑戦状だ。これまで国内ビジネスに注力し、中途半端な海外戦略を進めてこなかったことも素晴らしい。

 Google、Amazon、Appleすべてアメリカの会社である。いつの間にか私たちの生活は海外のサービスに囲まれてしまった。全部インターネットの影響だ。少なくとも15年前はこんなに海外のサービスばかりではなかった。スタートトゥデイ社はついに世界への大きな一手を打ってきた。みんなで「ZOZOSUIT」を応援しようではないか!(回し者ではありません)

 おわり。