著者:石田 麻琴

もしマーケティングが小学校の授業になったら。前【no.1483】

 もしマーケティングが小学校の授業になったら。前編です。

 20XX年。ついに小学生でもマーケティングが授業のひとつになった。ここは初めてマーケティングの授業を受ける小学五年生の教室。そして先生は生徒に最初の課題を与える。

「自分が好きなこと」をみんなの前で発表する

「じゃあ、いまからマーケティングの授業を始めます。最初にみんなにやってもらいたいのは『自分が好きなこと』をみんなの前で発表することです。『自分が好きなこと』はひとりひとりに発表してもらいます。時間は3分です。3分間で『自分が好きなこと』をみんなに伝えてください」

「せんせー、いきなり話してって言われても話せません。考える時間はないんですかー?」

「うん。いきなりは話せないよね。いまから10分間時間を取ります。その10分間の間に『自分が好きなこと』のテーマと、なぜ好きか、どこが面白いかについてまとめてみてください。じゃあスタート!」

 それまで先生の話を静かに聞いていた生徒たちがワイワイガヤガヤと話し始める。「俺なににしようかなー」「野球の話にしようかなー」「私は読書にするー」「思いつかねーよ」。先生から与えられた情報は少ない。どう話を組み立てればいいのか、生徒も迷っているようだ。「この授業に正解はないから、好きなように話してー」先生が大きな声を出す。

話してもらった後に、みんなに手を挙げてもらう

 10分が経った。「じゃあ、みんなやめー。静かに。席に戻ってください」友達同士で相談をしていた生徒たちが元の席に戻る。全員が席についたのを確認して、先生がいった。

「ひとつ、みんなに伝え忘れてたことがありました。みんなの前で『自分が好きなこと』を話してもらった後に、みんなに手を挙げてもらいます。たとえば『好きなこと』が『焼肉を食べる』だったとしたら、『焼肉を食べたくなったか?』を先生がみんなに聞きます。たとえば『好きなこと』が『サッカー』だったとしたら、『サッカーがしたくなったか』もしくは『サッカーを観戦したくなったか』を先生がみんなに聞きます」

「えー、そんなのイヤだなぁー。誰も手を挙げてくれなかったら恥ずかしいじゃん」生徒のひとりが言いました。

「うん。そうなんだけども、そうじゃないとこの授業はマーケティングの授業にならないからね。まあ、手を挙げてもらえるかあまり気にせず、自信をもって話してくれればいいよ!」。先生は生徒がプレッシャーを与えないようにいいました。

「じゃあ、最初は・・石田くんからいってみようか」。そして石田くんと呼ばれた少年が渋々と立ち上がる。ぎこちない動きでみんなの前に出た。「じゃあ、石田くんの『好きなこと』です。最初にみんなにテーマを伝えてね。じゃあ、頑張って!」。そして先生が拍手をすると、それに合わせて石田くん以外の生徒が拍手をする。

小学校のマーケティングの特徴的な部分?

「えっと、僕が好きなのは、野球をみることです。野球というスポーツはふたつのチームが表と裏で戦うスポーツなんですが、ピッチャーとキャッチャーがいて、その間にバッターがいて、バッターが打つと点が入ります。それで、野球の何が面白いかというと、ホームランで。ホームランってのはボールが観客がいるところに入るとホームランなんですけども、それが面白くて、ほかには早い球を投げる選手がいたり、足が速い選手がいたりして、それも面白いです。野球をみてるときに・・」。そう言いかけたとき、先生が石田くんとみんなの間に入ってきた。

「ピピー、3分経過です」先生が石田くんの話を強引にさえぎります。不満そうな石田くんに「時間はルールだからね」と先生が笑顔でいいました。そして先生はみんなの方を向いていいます。

「じゃあ、今の石田くんの話を聞いて、野球をみたくなった人~??」

 つづく。

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