著者:石田 麻琴

村田諒太選手の凄さとボクシングというマーケットでの可能性。前【no.1466】

 先日、村田くん(あえてこう呼ばせてもらおう)がついにやってくれた。もちろんWBA世界ミドル級チャンピオンの村田諒太選手のことである。いつもネットの話ばかりなので、たまにはボクシングとそのマーケットについて好き放題に書かせていただこう。

 私は自称スポーツマニアである。自分としては一応、スポーツマニアとして認知されたいのだが、仕事上あまりスポーツの話になることはなく、そのマニアっぷりを発揮する機会がないことを残念に思っている。なので、私に会った時にはぜひスポーツの話題を振っていただきたい。

 野球、バスケットボール、サッカー、競馬、競艇、オートレース、陸上、オリンピック競技・・などなど、若干情報が古いジャンルもあるが、その中でももっとも好きなスポーツがボクシングである。中学2年の9月からボクシング雑誌を買い始めたから、もう20年以上ボクシングを見続けていることになるWOWOWも親に頼み込んで契約してもらっていた。

 で、だ、これまでも心を揺さぶってくれるボクサーはたくさんいたのだが、ストーリーがあり尚且つ実力的にも期待値が大きいのが、村田くんなのだ。

 ご存知のとおり、ミドル級の世界チャンピオンは村田くんが二人目だ。竹原さんが1995年に同じWBAの世界チャンピオンになっている。当時はインターネットもなく、スマホもなく、SNSもなかったのでその世界タイトル戦自体がマイナーな状況でおこなわれた。しかも、当時のチャンピオンに舐められまくり、数回試合が流れた上「1ヵ月半後ならやってもいいよ」という状態だったのだ。準備期間がほぼ無かった。(カストロも舐めまくって準備をしていなかった説もあるが・・)

 そう考えると、5月の初挑戦・今回の再戦がきちんとしたスケジュールで行われたこと自体実はすごいこと。日本は中量級の後進国。世界戦のイニシアチブは常に日本の外にあった。今回はイニシアチブを帝拳ジム・電通・フジテレビが組んでガッチリおさえにいったわけで、中量級の興行でこれを実現したことも快挙。ボクシングというスポーツは「対戦相手を選べる」という不思議なスポーツなので、裏側の営業活動が非常に重要で、充分な実力があっても世界タイトル挑戦のチャンスがこない選手もたくさんいる。

 さて、村田くんの実力の話をしていきたいのだが、思い出して欲しい、まず村田くんはオリンピックのゴールドメダリストなのだ。そもそも、この時点で伝説なのであって、もしかしたら我々が生きている間にボクシングのゴールドメダリストは日本に現れないかもしれない。それほどの伝説的な快挙。アマチュアボクシングの世界においてはオリンピックに出場することすら簡単ではないのだ。

 スーパーフライ級で世界最強との呼び声高い井上尚弥選手。オリンピックはアジア予選敗退である。三階級制覇チャンピオンの井岡一翔選手もアジア予選敗退。フライ級やバンタム級などの軽量級はアジア人の層も厚いとはいえど、現在の日本を代表する世界チャンピオンはオリンピックの出場すらかなわなかったわけだ。ボクシングの世界において、オリンピックは出場するだけでもすごいことなのである。しかもミドル級で、ゴールドメダルなんて。軽量級でのゴールドメダルは万が一あったとしても、ミドル級のゴールドメダルはありえない。(とかいって、またいつかすごい選手が出てくるだろうけどね)

 ちなみにいうと、村田くんと同じ階級の世界的チャンピオン(ここはライバル、と言おう)のゲンナジー・ゴロフキンは銀メダリスト。単純比較はできないが、あのゴロフキンでさえゴールドメダルを取ることはできなかったのだ。昨今のゴールドメダリストでプロの世界チャンピオンというと、オスカー・デラ・ホーヤやフロイド・メイウェザー・ジュニアが思い浮かぶが、いずれも1,000億円以上稼いだ超セレブである。

 つづく。