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3,000人にメールマガジンを送った結果。【no.0229】

 ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら

 月曜日の朝、おにぎり水産ネットショップのメールアドレス3,000人にメールマガジンを送った結果を見ようと、鬼切社長は誰よりも早く出社をしました。いつもは朝礼後、工場の見回りをした後に触れるパソコンの電源をいち早くオンにし、メールの受信ボックスを開きます。鬼切社長の心は躍りました。しかし、そこには予想もしていなかった事態が。

 微風。東京ドーム並の微風状態。つまり、ほぼ無風。

 鬼切社長の受信ボックスに落ちたメールは、ほとんどがショッピングモールからの注文受付メールではなく、笹かまぼこの原材料の仕入れ先からのメールが2通(本日材料を出荷しましたメール)、どこからなのかわからないエッチな(バイアグラの)スパムのメールが10通、そして総務の奈々さんからのメール(息子が風邪を引いたので病院へ連れてから出社します)の1通。笹かまぼこ5枚セット1,480円(通常価格に戻した)の注文受付メールは、わずか5通

 いやいや、そんなわけがないだろう。もしかしたら静子さんがメールマガジンの配信日時を間違えてしまったのかもしれない。日曜の21時ではなくて、今日(月曜)の21時にしてしまったのかな。そう思いショッピングモールのシステムを確認しても、やっぱり昨日(日曜)の21時にメールマガジンは流れているようです。なんだこれは。なにかのトラブルでもあったのか。

 鬼切社長がパニックに陥っていると、ネットショップ担当の静子さんが出社してきました。
「静子さん、昨日、メールマガジン流したよね。間違いなく3,000人に流したよね。でも、売れてないんだよ。3,000人のお客さんに送ったのに、5セットしか売れてないんだよ。どうしたんだろう。何かあったかな」

 静子さんも呆然としていました。ネットショップの運営講座に通い覚えたメールマガジンの流し方。そして、メールマガジンの内容も面白おかしく、でも丁寧に書き上げたという自負がありました。メールマガジンを流した翌朝とはいえ、それでもまだたった5セットしか売れていないとは。鬼切社長は悲しそうな顔をしている静子さんを見て、何とも言えない気分になりました。なんとかして、静子さんの努力を成果につなげたいと思いました。

 鬼切社長が考えたのは、おにぎり水産ネットショップのメールマガジンについての緊急ミーティングでした。鬼切社長、ネットショップ担当の静子さんだけではなく、総務の奈々さん、仕入れ担当の孝一さん、工場長の賢司さんなどを集めて、次回のメールマガジンの内容を決める会議です。どんなテンションで文章を書けばいいか、どんなレシピを載せるか、おにぎり水産の人の顔がもっと見えるコンテンツはどうかなど、4時間という長時間話し合われ、ベストと思われるメールマガジンが仕上がりました

 あとはこのメールマガジンを流すだけです。前回の反省を踏まえて、日曜の21時ではなく、土曜の11時に配信の予約をすることにしました。土曜の朝に個人の受信ボックスを空けて、メールを確認する人が多いのではないかと考えたからです。

 鬼切社長は不安でたまりません。何となく気づいていました。3回のインターネット広告の出稿を通じて、2,300セットの笹かまぼこを売り上げました。しかし、1セットの値段は980円(送料無料)です。3回目の父の日広告においては、1セット780円(送料無料)で販売しています。はっきり言って、赤字なのです。2,300セットを売り上げても、利益は残りません。むしろ、100万円以上の広告費を支払っているだけ、赤字です。それでも、広告とランキングを通じて新しいお客様に接触するためと思い、支払ってきたのです。残った資産は、この3,000人分のメールマガジンのリストです。これが機能しなくては、すべてが水の泡なのです。おにぎり水産のスタッフにも顔が立ちません。

 鬼切社長はメールマガジンが流れる土曜の朝10時に出社をしました。落ち着いて休日を楽しめるような気持ちではありません。パソコンの電源を入れ、メールボックスを開き、その時をじっと待ちます。おにぎり水産の笹かまぼこを朝食替わりに食べながら‥

 そして、11時になりました。

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