著者:石田 麻琴

300万円の売上のために、240万円の経費を支払う。【no.0308】

 ネットショップのあるあるストーリー

その壱つづき。(前回はこちら

うわっ、まただよ。

猪井氏(いいし)先生に電話を切られた瞬間、鬼切社長はそう思いました。猪井氏先生の宿題はいつもムチャぶり。解決法ではなく、そもそもどうやったら解決法が見えるのか、猪井氏先生が何を意図しているのかさえも、自分自身で探していかなければいけないような宿題です。猪井氏先生はこう言いました。

「10箇条のひとつ目に『売上年商1億円。利益2,000万円』って書いたじゃろ。それ、本当か?その内訳を想定して、ワシに説明してくれ」

つまり、おにぎり水産のネットショップで年商1億円を売ったときに、本当に利益が2,000万円残るのか、それを説明して欲しいということでした。この宿題について、猪井氏先生の意図はよくわかったのですが、果たして、その計算をどうやってすればいいのかがピンときません。ひとまず、ショッピングモールに出店していた時代にネットショップの担当をお願いしていた静子さんに意見を聞いてみることにしました。

「静子さん。猪井氏先生からこんな宿題をもらったんだけど、どう思う?」

鬼切社長の中で、若干のイメージはありましたが、自分が思っていることは敢えて静子さんに伝えず、静子さんの素直な意見を聞いてみることにしました。

「そうですねぇ。ショッピングモールで笹かまぼこを売っていたときは、3ヶ月で3,000セット以上、笹かまぼこセットを売ったんですよね。だいたい1セットが1,000円くらいなので、売上にして300万円くらいだったってことですよね。あと、インターネット広告を買っていたんですよね。グルメ号と、母の日と父の日、合計で3回ほどインターネット広告をかけて・・それがいくらでしたかねぇ。グルメ号が50万円?母の日が70万円・・ほどだったと思います。すいません。よく覚えていなくて」

「いやいや、いいよいいよ。ありがとう!」

鬼切社長は静子さんに丁寧に礼を言うと、経理をしてくれている松永さんのところに向かいました。「松永さん、ショッピングモールに支払った金額の合計ってすぐわかるかね」。そう言うと、松永さんは経理の手を止めて、「ああ鬼切社長、ちょっとだけお待ちくださいね」とバインダーに閉じた書類の確認を始めました。自分のために、作業の手を止めてもらって申し訳ないと、鬼切社長は思いました。

「あー、ありましたありました。請求は何回かに分かれていて、しかも、明細の意味しているところが良くわからないので、説明しきれなかったらすいませんね。請求書の合計だけをまとめた支払額で言うと、トータルで240万円ですね。だいたいの内訳としては、インターネットの広告費が160万円、ショッピングモールへの出店費用関連で30万円、売上に課金されるロイヤルティ分で30万円、あとクレジットカード決済の利用料として20万円といったところですね」

(なるほど、300万円ほどの売上のために、240万円の経費を支払ってしまったわけか・・)

鬼切社長は、ショッピングモール時代のことを振り返り、また自分が恥ずかしい気持ちになりましたが、それを表情には出さないようにして松永さんにお礼を言い、事務所を出ていきました。社長室に戻った鬼切社長は、静子さん、松永さんに聞いた数字をホワイトボードに書き出してみました。

「まず、売上が300万円だったと。そこに対しての経費が、まずインターネット広告160万円、出店費用関連30万円、ロイヤルティ分で30万円、クレジットカードで20万円ほどかかっとると。他には、原価や人件費もかかっとるはずだよなぁ。『売上年商1億円。利益2,000万円』を実現するためには、300万円の売上に対して、60万円の利益が残らないといかん。どうやって適正な数字を考えていけばいいのか・・」

悩んだ鬼切社長の頭に、ある人物が浮かびました。ここはネットショップの先輩に聞いてみよう。鬼切社長は携帯電話を取りました。電話をかけた相手は、二子社長でした。

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