著者:石田 麻琴

1番手を投入しないと可能性の有無はわからない【no.0339】

 ネットショップの規模別の課題「月商500万円」のフェイズ。(前回はこちら

 販売チャネル展開・ブランド展開を進めるのは容易ではありません。新しいネットショップを構築するのは簡単です。販売チャネル展開であれば、自社サイトなりショッピングモールと契約して、その仕様に沿ってネットショップのサイトを移植することで可能です。ブランド展開であれば、現在のネットショップから切り離す商品を選択し、新ショップが対象とするお客様を意識しながらデザイン・レイアウトを組んでいくことで構築できます。もちろん、Eコマースのソリューションサービス会社にお手伝いいただいて、販売チャネル展開・ブランド展開を進めていく方法もあります。ここまでは、さして難しくはありません。

 難しいのは運用です。つまり、販売チャネル展開・ブランド展開をした新しいネットショップを、軌道に乗せていくまでが大変なのです。飛行機で言えば、離陸です。新しく立ち上げたネットショップは、売上ゼロ、お客様ゼロからのスタートになります。データもゼロです。「データをとって、毎日カイゼン」するための、そもそもの素材が集まりません。最初の数週間、数か月は分析できるボリュームのデータが取れない状態が続きます。本店となる既存のネットショップが月商500万円に到達していたとしても、新しいネットショップは「売上ゼロのフェイズ」(ブログはこちら)に近い状況です。

 厳密にいえば、月商500万円を売っている「商品力」と「提案力(コンテンツ力)」のあるネットショップとしてのチャネル展開になるので、その点では有利です。しかし、売上を立てるための公式、「商品力×提案力×集客力」の「集客力」が、新規のネットショップではゼロです。いくら「商品力×提案力」が強いネットショップでも、「集客力」がゼロならば、売上もゼロなのです。このフェイズを突破できるのは、Eコマース事業においてもっとも様々な試行錯誤を経験した事業責任者以外にはいません。ですから、販売チャネル展開をする場合、新規に出店するチャネルを事業責任者が担当するのです。

 現実の話をします。楽天市場に出店していて、ある程度軌道にのってきたネットショップがYahoo!ショッピングの販売チャネル展開に失敗するパターン。楽天市場もしくはYahoo!ショッピング、その他ショッピングモールに出店していて、ある程度軌道にのったネットショップが自社サイトの販売チャネル展開に失敗するパターン。この2つとも、失敗の原因として挙げられるものに「担当者」の問題があります。社内でもっとも経験とノウハウ、そこから培ったインターネットでのマーケティングセンスを持っているスタッフではなく、社内の2番手3番手のスタッフに新しいネットショップを任せたことによる失敗です。最前線で戦ってきた人間と、それを2番手3番手から見てフォローしてきた人間というのは、「ここまで違うのか」というケースです。

 もちろん、2番手3番手が「必ず失敗する」わけではありません。ただ、2番手3番手が「思った以上に手こずる」可能性を頭に入れておいてください。むしろ、2番手3番手が得意なのは、飛行機が離陸した後、ネットショップが軌道にのった後の「データをとって、毎日カイゼン」の運用フェイズです。離陸から軌道にのるまでの成長フェイズは1番手のスタッフに任せるか、1番手のスタッフに徹底的にフォローをしてもらうか、どちらかの選択が良いでしょう。やってはいけないのが、2番手3番手のスタッフに任せたものの結果が出ず、「このマーケットは難しいな。本店サイトに集中しよう」と、販売チャネル展開・ブランド展開を中断してしまうことです。可能性があるのか、それとも可能性が「本当に」ないのかは、「1番手を投入してみなければわからない」のです。

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3 コメント

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