著者:石田 麻琴

鬼切社長は現場からヒントを得ようと考えた。【no.0268】

 ネットショップのあるあるストーリー、その壱つづき。(前回はこちら

 鬼切社長は、早速、「おにぎり水産ネットショップのお客様」を考えることにしました。会議室のホワイトボードの前に立って、思い浮かんだことを書きだします。

 まず、最初に書いたのは、「笹かまぼこを食べるのが好きな人」でした。次に書いたのは、「何回も買い続けてくれる人」でした。その次に書いたのは、「笹かまぼこを安売りではなく、きちんとした値段で買ってくれる人」でした。その次に書いたのは、「笹かまぼこの美味しさを周りの人にも伝えてくれる人」でした。その次に書いたのは、「笹かまぼこをプレゼントとして使ってくれる人」でした。その次に書いたのは、「検索エンジンで笹かまぼこと検索する人」でした。

 そして、鬼切社長のペンの動きは止まりました。自分でも、何を書いているのかよくわからなくなってきました。「笹かまぼこを食べるのが好きな人」で「何回も買い続けてくれる人」で「笹かまぼこを安売りではなく、きちんとした値段で買ってくれる人」で「笹かまぼこの美味しさを周りの人にも伝えてくれる人」で「笹かまぼこをプレゼントとして使ってくれる人」で「検索エンジンで笹かまぼこと検索する人」、そんな人がいるのかもわからないし、どこか他人任せの自分勝手な希望のような気もします。全ての条件を「且つ」ではなく「もしくは」に変えると、「つまり、笹かまぼこのことを知っている全てのお客様」という意味になってしまいそうで、それはそれで意味がわかりません。

 完全に思考が停止してしまった鬼切社長は、気が付くと電話の受話器を片手に取っていました。猪井氏(いいし)先生に電話をして、質問をしようかと思ったのです。しかし、こんな1時間やそこら考えただけで電話をかけてしまうのも憚られます。鬼切社長はもう少し、自分で考えてみることにしました。

 自分のデスクで物事を考えていても、どこか煮詰まります。鬼切社長は、社内をウロウロして、スタッフのみんなの仕事ぶりを見たり、仕事の邪魔にならない程度の会話をしたりする中で、どこかにヒントが埋まってはいないかと考えました。

 まずは、事務所です。ネットショップ担当の静子さんだけではなく、笹かまぼこを卸す営業のスタッフが電話をかけています。これまでのおにぎり水産を支えてきた面々です。また、営業スタッフが最大限の力を発揮できるように、バックアップする事務のメンバーもいます。そして、笹かまぼこの原材料をより安く、より品質が良く、安定的に調達するため、日々飛び回っている調達部隊もいます。おにぎり水産がネットショップにチャレンジできるのも、彼らが原資を作ってくれているからです。

 次に工場です。一昨年、工場の機械を新しくしてから、業務効率がアップし、生産力が大幅にアップしました。また、原材料をよりスピーディーに安全に加工することができるようになったので、より美味しく商品を提供することができるようになりました。工場で働くスタッフは、一部の社員を除き、ほとんどがアルバイトのおば様たちです。常時40名程度が勤務しており、中にはおにぎり水産でのアルバイトを30年以上も続けてくれている方もいます。ネットショップがスタートしてから、物流面でサポートをしてくれたのもこのメンバーでした。1日1,000件の笹かまぼこセットの発送も、(文句を言いながらも)きっちり完了させてくれた、プロフェッショナルのアルバイト集団です。

 そして、実店舗です。ちょうどおにぎり水産の工場見学ツアーが終わった時間だったらしく、工場併設の実店舗にはたくさんの観光客が詰めかけていました。自宅用の笹かまぼこセットを数セット、お土産用にも数セット、買い物カゴいっぱいの笹かまぼこを買ってくれるお客様がたくさんいます。「笹かまオニギリ」の新作「プレミアム笹かまぼこ」の販売も順調のようでした。

 鬼切社長は、事務所・工場・実店舗の3つを、ネットショップのお客様を考えるため、毎日グルグルとまわってみることにしました。現場からヒントを得ようというわけです。

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