著者:石田 麻琴

数字を毎日みることで「数字に疑問をもつ」ことが大事【no.0651】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「2週間、数字をつけてみてどうじゃった?何か感じたことがあったじゃろう?」

 猪井氏(いいし)先生の質問に、七海さんは答えました。

「猪井氏先生にいわれたとおり毎日数字をつけていて思ったのは、毎日数字が変わるってことでした。まだ売上と受注件数はほとんどないんですけども、アクセス人数が毎日変化していて驚きました。1日、5人しかお客さんがアクセスされない日もあれば、1日10人お客さんがアクセスしてくれる日もあって、『何か理由とかあるのかな』って思いました。2週間しか数字をつけていないので、あくまでいまのところなんですが、月曜日から日曜日までの曜日による違いも特に感じないんですよね」

 七海さんが話すのを、猪井氏先生は感心しながら聞いていました。

「おー、七海はん、ええな。そんくらい考えられてたら十分じゃ。まず、この実行数値管理表を毎日つけることで大切なのは、『数字に疑問を持つ』ってことじゃ。七海はんが毎日エクセルをつけていて、『なんでアクセス人数がこんなに変わるんだろう?』って考えたわけじゃろ。その『疑問』が重要なんじゃ。そして、その『疑問』から『理由』がはっきりわかったらえらいことじゃろ」

「猪井氏先生がおっしゃる、『原因と結果』というやつですよね」

「そうじゃ。インターネットのマーケティングは、毎日数字をつけるところから始まる。ほんで、数字に変化があったときに『なんで数字が変化したのか』を考える。その『なんで』がわかったら、それが再現性のあることか、再現性のないことか、再現性がないなら、何かしらの対策をしておくことが可能か、を考えるわけじゃな。そうすれば、また同じように『数字を作る』ことができるようになるわけじゃ。ちなみに、おにぎり水産ネットショップの『プレミアム笹かまぼこ』は売れたんかな?」

 「プレミアム笹かまぼこ」は、猪井氏先生が提案してできた商品でした。おにぎり水産の新しいネットショップである「笹かまオニギリ」が販売している商品はこの「プレミアム笹かまぼこ」だけです。「プレミアム笹かまぼこ」の5枚入り、10枚入り、20枚入りの三種類でネットショップをスタートさせました。

「それが、毎日ではないですが、ポチポチ注文をいただいているんですよ。この2週間で3件、ご注文をいただきました。いずれも10枚入りのセットの販売だったので、売上は15,000円というところです」

 七海さんは喜んでいるとも、残念がっているともいえない声で話しました。

「おー、ホンマか。ええがな。スタートしたばっかで3セット売れてるなんて、幸先ええで」

 猪井氏先生は七海さんを褒めました。これは、七海さんには意外でした。

「さて、こっからどうするか、というわけじゃ。具体的にどうネットショップを活性化させていくか決めんとな。ここは七海はん、麻間と話合って、実際にどういうアクションを起こしていくか決めなはれ。ちなみに、ヒントじゃけども、おにぎり水産の新しいネットショップは、どんなお客さんを対象にするか、憶えとるよな?」

「うっ・・」

 猪井氏先生の質問に、七海さんは詰まりました。

「七海はん、いかんなぁ。憶えとらんのかぁ。一番大切なところじゃぞ。『笹かまオニギリ』のお客さんは、まずは『笹かまオニギリのことを知っている人』じゃ。つまり、『笹かまオニギリの実店舗』に来てくれた人、ゆうことになる。もう忘れちゃいかんぞ」

 そういうと、猪井氏先生はおにぎり水産の会議室から出ていきました。会議室には七海さんと麻間さんのふたりだけになりました。

「じゃあ、七海さん、明日から何をやるか、私と考えましょうか」

 麻間さんはそう言って、ニコッと笑いました。

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