ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
二子(にこ)社長の話を聞いているうちに、鬼切社長は自分の心の中の炎が激しく燃え上がっていくのを感じていました。気づくと、鬼切社長の両腕は、プルプルと小刻みに震えていました。
「に、に、二子社長、私は、私はやりますよ。やりますよーー!」
鬼切社長は突然、叫びました。脈絡もなく、「やる」宣言が出たので、二子社長はそんな鬼切社長の様子が嬉しいながらも、少し戸惑っていました。
「鬼切社長、気持ちはわかるんですが、まだ勉強会は終わってないので、やる気を燃え上がらせるのは、あとちょっとだけ待ってください。次の話が今回の勉強会の最後です」
フーフーフー。「二子社長、何ですかー!最後の項目はー!」。フーフーフー。鬼切社長はかなり興奮をしているようです。その興奮を自分自身でおさえるためか、鬼切社長は右手にもっていた生ビールのジョッキを一気に飲み干しました。さっき追加を頼んだばかりだったので、ほとんど満タンに入っていたのですが・・。
「鬼切社長、ネットショップの運営にかかる最後のお金。これが広告費です。『売上年商1億円。利益2,000万円』から、商品原価、物流費、システム利用料、固定費・人件費ときて、最後に広告費です。これが主なネットショップ運営にかかる経費です」
二子社長から「広告費」という言葉を聞いて、鬼切社長は今までとは別の意味で興奮が高まりました。これまでおにぎり水産のネットショップをショッピングモールで運営していた時代、ショッピングモールの担当コンサルタントから合計で200万円以上の広告を買っていた経験を思い出したからです。
鬼切社長の興奮は最高潮に高まりましたが、しばらくするとショッピングモールでの失敗を思い出し、一気にテンションが落ちていきました。先ほどまでの鼻息は、ため息に変わってしまいます。「ハァ」と何度か、鬼切社長は下を向いてため息を吐きました。
「広告費なら、私も知っていますよ。ショッピングモールにおにぎり水産ネットショップを出していた時代に、200万円以上、広告を買いましたから。確か、合計で240万円とかだったですかね。細かい額は、もう覚えていません。というか、忘れたいぐらいです。忘れられたのかな」
事情を良く知っている二子社長でしたが、いつまでも鬼切社長を励まし続けるわけにはいきません。鬼切社長は、同じ業界の大先輩ですが、いつまでもシュンとしててもらうわけにもいきません。
「鬼切社長!もういい加減に、過去のことは忘れましょうよ!過去を清算しないと、前に進めませんよ!」と、二子社長は鬼切社長を一喝しました。鬼切社長、それでもまだ落ち込んだままで、「そうですよねぇ」と呟いただけでしたが。
二子社長は広告費の説明を進めることにしました。自分にいまできることは、ネットショップの運営に関わるお金について鬼切社長に伝えるだけ。これから、鬼切社長がインターネットでのビジネス展開にどう向き合っていけるのかは、やはり鬼切社長自身の気持ち次第だと思ったのです。
「鬼切社長、ネットショップを成長させるためにどれくらいの広告費をかけるかはマーケティング戦略によって異なります。スタートしたばかりのネットショップなら、新しいお客様を集めるために必要以上の広告をかけることもあります。おにぎり水産のネットショップが合計で200万円以上の広告をかけたようにです。なので、新しいお客様に知ってもらうために広告をかけるのは、別に悪いことではありません」
うつむいていた鬼切社長は、「おっ!?」っというように顔を上げ、二子社長の方を見ました。「必要以上の広告をかけることが、別に悪いことではない・・と?」。二子社長は鬼切社長の表情が変わっていくのを確認しながら、広告についての解説を続けていきます。
「広告をかけること自体が『悪』ではないんですよ。そこに『狙い』のある広告をかけていないことが『悪』なんです。おにぎり水産ネットショップの『広告』の失敗は、まさしくそこでしょうね」
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