著者:石田 麻琴

勝ちに近づくビジネスモデル(EXILE・HIROさんの場合)【no.0289】

 先日、テレビを見ていたら、EXILEのHIROさんの特集がやっていたんですね。休日の昼間だったので少しボーっとしながら、でも最後まで見てしまいました。もしかしたらご覧になった方いるかもしれませんが、内容としては、EXLIEのパフォーマーを引退したHIROさんが、プロデューサーとしてLDHの社長として、どのような姿勢で仕事に向き合っているのか、というような話でした。そのときに初めて知ったことなんですが、LDHって、ダンススクールの運営事業もやっているんですよね。

*ダンススクール事業はなぜ儲かるのか

 いままで、てっきりEXILEや三代目J soul brothersやE-girlsが所属する芸能事務所なのかと思っていたんですが、ダンススクールもやっているのかと。もちろん、アーティストのプロデュースであり、ダンススクールはそのための養成機関的な役割を果たしていると思われるのですが、いわゆる芸能事務所がやっている芸能を前提とした歌と踊りの勉強、とは少し違っていて、水泳教室や書道教室のように、習い事としてダンスを楽しむことを目的にした教室のようなのです。「これはHIROさん、かなり儲かっているぞ」と、そんなことを考えてしまいました。

 ダンススクールという事業がなぜ儲かるのか、という話です。まず、初期投資のコストが抑えられることが挙げられると思います。極端な話、ダンスフロアに壁一面の鏡があれば、なんとなくはできてしまう。音響と防音の設備は必要なのでしょうが、音響はラジカセでも対応できますし、防音についてはバイオリン教室もドラム教室も同条件ですよね。ダンスフロアと鏡とラジカセ、そして先生が1人いればスタートすることができます。しかも、重要なポイントは、ひとりの先生が一度にたくさんの生徒を教えられること。フロアの広さにも関係してくると思いますが、15~20人くらいの生徒をひとりの先生が同時に指導することができるわけです。

*先生ひとり対し生徒ひとりの指導だと厳しい

 反対に、例えばイメージしていただきたいのがピアノ教室です。指導する機材としてグランドピアノを用意するなら新品で最低でも100万円以上、中古でも50万円以上、アップライトピアノなら新品で30万円以上、中古で20万円以上します。そこまでは初期投資なので良いでしょう。絶対的に違うのが、先生ひとり対し生徒ひとりの指導が通常であることです。先生ひとりに対して生徒20人のピアノ教室って聞いたことがないですよね。かといって、学費をダンススクールの20倍にするわけにはいかないわけです。せいぜい、2倍が良いところかと思います。そう考えると、ピアノ教室よりダンススクールの方が、「儲かりやすいビジネス」だということがわかりますよね。ピアノ教室を、水泳教室・学習塾などに変えて考えてみてください。ちなみに、ピアノ教室が「ダメ!」と言っているのではないので、悪しからず。(私も私の姉も、嫁もピアノ教室に通っていましたし)

 また、他の重要な要素として、ダンススクールという市場環境がどうなっているか、競合ダンススクールの状況はどうか、というところがあります。ダンススクールが「儲かりやすいビジネス」だったとしても、ニーズがなかったり、特別な競合がいたりすると、また話が違ってくるわけです。

*市場環境もダンススクールを後押しする

 まず、市場環境についてですが、学校教育にダンスが加えられるなど、特にキッズのダンススクールについて追い風が吹いているのは間違いないでしょう。番組ではダンスに1,000億の市場規模があることも触れられていました。あとは、競合優位性ですね。ここはそもそも、EXILEという絶対的なブランドがありますから、強いに決まっています。現実に、E-girlsのメンバーの半数はLDHのダンススクールの出身者ということですから、ロールモデルも明確です。サッカーチームのFCバルセロナがサッカー教室→ユースチームを持つようなイメージと、全く同じなのではないでしょうか。HIROさんの場合、自らEXILEというグループで日本に「パフォーマー」というダンスの市場を作ってしまったところがより凄いところですが。

 もう1つ、最近、「やった時点で勝ち」のビジネスを知ったので、次回はその話を。

 つづきはこちら