著者:石田 麻琴

リアル(実店舗)とネット(Eコマース)は、マーケティングの「基点」が違う【no.0766】

 Eコマース事業をスタートするとき、何よりもまず知っておきたいのはEコマースの「マーケティングの考え方」です。

 楽天市場に出店するのが良いのか、自社サイトの方がいいのか。商材は何が売れそうなのか。集客は広告をかけた方がいいのか。メールマガジンの書き方はどうか。注文の管理はシステムを活用するのか、エクセルで何とかなるのか。売上目標とその期間をどのように設定すればいいのか。

 ネットショップの運営を始めるにあたり、気になることが様々あると思います。しかし、それよりもまず最初に知っておきたいのはEコマースのマーケティングは実店舗のマーケティングとは異なるということです。ネットで売るためには、ネットの商売の考え方が必要です。ここが、ほとんどの事業者が「ネットで成功しない」理由です。

 リアルの商売には、商圏と立地があります。この商圏と立地がお店の成功に大きく関わります。ですから、実店舗をオープンするときには「商圏は何キロになるのか」「商圏内にどんなお客様が住んでいるのか」「今後の都市計画はどうなっているのか」「駅からの導線はどうなっているのか」「近くに学校や病院はあるか」などを細かくマーケティングして、出店場所を決めるのです。

 すでに古い話ですが、事業スタート当初マーケティング費用がなかったオリジン弁当はセブンイレブンの隣を狙って実店舗を出店していたとか。「セブンイレブンの隣ならば、正確にマーケティングされているはずだ」という知恵のひとつです。面白いですよね。

 それに対して、ネットには商圏も立地もありません。インターネットという無限に広がる宇宙の中に、ポツンとひとつだけ浮いている小さな星のようなものです。ネットの世界は良くいえば、全世界が商圏です。ただし、逆にいえば全世界のネットショップが競合であるともいえます。ある意味、「お客様に選んでもらう」という点で、リアルの商圏ビジネスよりも市場環境は厳しいのです。

 ネットには立地もありません。ですから、実店舗のようにたまたまお店の前を歩いていた人が「こんなお店できてたんだぁ」といって、ショップに立ち寄ってくれることがありません。どんなに素敵なネットショップのWEBサイトを作っても、どんなに面白いキャンペーンをおこなったとしても、どんなにレアな商品を取り扱っていたとしても、「お客様が知らなければ」立ち寄ってもらえることはありません。

 ここが、リアルとネットの大きな違いです。

 リアルは「実店舗があって、そこにお客様がくる」という考え方です。Eコマース事業をおこなうときに、この考え方をそのままネットにもってきてはいけません。「ネットショップがあって、そこにお客様がくる」わけではないのです。Eコマースに実店舗と同じ考え方で臨むと「なんでネットショップを立ち上げたのに、お客様は来てくれないんだ?」ということになります。

 Eコマースの考え方は、「ネットショップがあって、そこにお客様がくる」ではなく、「そこにお客様がいて、ネットショップにやってくる」です。どちらも実店舗・ネットショップにやってくるのはお客様なのですが、基点が異なります。リアルビジネスの場合は基点が「実店舗」にあり、Eコマースの場合は基点が「お客様」にあるのです。

 はじめて知った方にはちんぷんかんぷんなところもあると思います。まずは、「リアルとネットの商売は違う」というところ、Eコマースは「そこにお客様がいて、ネットショップにやってくる」という考え方であるところから覚えてみてください。もちろん、ネットで売上を伸ばすためには「ネットの売り方を知っている」人財が必要になるわけです。

 おわり。