著者:石田 麻琴

ビールの売り子が「データベースマーケティングを活用して」野球場で最大の売上を上げるには?後編 【no.0021】

(前回のブログを読んでから、こちらをお読みください。)
ビールの売り子を使って、野球場でビールの最大の売上を上げるには?前編

 「ビールの売り子を使って、野球場でビールの最大の売上を上げるには?後編」です。

■事前準備として試合データを確認しておく‥!

 ビールの売り子さんの動きとして、まず、試合データを確認してもらいます。マーケティングデータは容易に理解できるように、加工してレイアウトを組んでおくと良いでしょう。天候・日付・対戦相手・対戦成績・先発ピッチャー・スタメンなど、試合データを確認したのち、試合データと注文データを掛け合わせた試合×注文データを確認してもらいます。このデータはつまり、「今日の試合でどんな感じでビールが売れそうか」を予測させ、試合を迎えるまでの事前準備のデータとして扱うものとなります。試合の条件と、その条件時の注文の傾向を見ることで、例えば、こんなビールの売り子さんにこんな仮説を立ててもらいます。

・今日の気温で、対戦相手がヤクルトだと、キリンよりアサヒのビールの方が売れる。だから、キリンの売り子人数を増やす。
・今日は年間シートを30席持っている㈱石田の給料日なので、ビールが売れそう。㈱石田からは過去に多くの注文を貰っている。
・先発ピッチャーが石田と田中の場合は投手戦になる可能性が高い。試合時間が短くなるので、前半からどんどん売っていく。

 こんな感じです。もちろん全てが数値的な検証の対象になるので、この仮説が良いか悪いかは関係がありません。試合×注文のデータからどんな仮説が出せるか。その仮説をもって販売の準備をすることによって、仕事の成果を1%ずつ少しでも上げていけるかと思います。

■座席データを使って、お客さんと注文を紐づける‥!

 とはいえ、年間シートで購入しているお客さんの仮説は立てることができても、実際にどんなお客さんが来られるかはわかりません。試合が始まると、座席データの出番です。ビールの売り子さんは、お客さんにビールを売ると、座席番号の入力をします。手で入力するより、バーコードで読み取る方が早くて正確でしょう。そうすると、「いつ、どこの席のお客さんが、どんなビールを注文したか」のデータが蓄積されていくわけです。もちろん、試合前の準備である試合×注文のデータから、「試合前、試合前半でビールを注文するのはライトスタンドとレフトスタンドが多い」というデータが出ていれば、売り子さんの人数や動きもその比重に合わせておきます。

 まあ、各チームの応援席に座る人は、チームの攻撃中は応援に夢中でしょうから、相手チームの攻撃時の方がビールは売れそうなもんですよね。こんな、「当たり前っぽい」考え方も、自分が「主観的」に思って実行するのと、「客観的」なデータから判断して実行するのでは成果が全く違います。試合×注文データを活用することによって、「客観的」なデータから、必要な比率まで算出できるわけです。「主観的」な勘からでは、正確な比率までは出せません。ここでも、最終的な成果が数%違ってくるわけです。

■データベースマーケティングで傾向を読み、最適なアプローチを仕掛ける‥!

 ここからは、試合×注文×座席データの分析です。ここからは完全にデータの勝負です。売り子さんにはこんなデータを提供し、最適・最大の成果を出せるようフォローしていきます。

・1杯目にサッポロ、2杯目にキリンのビールを注文した方は、特にビールの種類にはこだわらない。だから誰が売りに行っても良い。
・1杯目から2杯目を注文するまでが20分以内の人は、さらに20分以内にビールの注文をする可能性が高い。だから必ず回ること。
・1組2人2杯でビールを注文した方は、一度に2杯注文する可能性が高い。なので、グループの誰かが飲み終わりそうになったら営業。

 とか、無限にアイデアがありそうですが、こんな感じです。過去のデータから、座席データの傾向に合致するデータを見つけ出し、そのお客さんに対して最適なマーケティングをかけていくわけです。データベースマーケティングですね。

 ここで、さらに成果をアップさせるために、加えるとしたら下記を追加します。

・売り子データ:売り子の特性をデータ化したもの。過去の実績や属性を蓄積しておく。

 つまり、お客さまに対して、最適な売り子さんが販売していく、ということです。単純な戦略としてまず思い浮かぶのは、「専門性のある売り子をつくる」ということでしょう。アサヒやキリン、サッポロ、サントリー、各々を専門にしたビールの売り子さんを作る。内野席、外野席、二階席、VIP席、各々を専門にしたビールの売り子さんを作る。このあたりでしょうか。そして、各専門性を持った売り子さんに、工夫をしてもらう。工夫といっても、簡単なことでいいんです。「前田選手はもっぱらサントリー派みたいですよ」とか「サッポロは泡が細かいので、外野席でも応援しやすいですよねー」とか、ビールを注いでいる際に、お客さんとのちょっとしたコミュニケーションをとるための工夫です。お客さんの顔を見れば、どこのビールが好きかわかる、とかそんなことは難しくて無理だと思うんで。

続きはこちら。
「ビールの売り子を使って、野球場でビールの最大の売上を上げるには?」終章