(前回はこちら)
*廃棄率75%減の実現方法を解明してみる
スシローがビッグデータを活用することによって回転寿司の廃棄率75%減を実現したという話。どのようにして実現したのかを解明してみたいと思います。
話の要点は、回転寿司システムの「構築」と「運用」の2つに分けられます。「構築」はどのようなデータベースを用意するのか、そしてどんな分析のアルゴリズムを組んでいくのか。「運用」はデータを活用して、効果が出るように(つまり廃棄率が最適化されるように)チューニングをしていく作業です。
当然のことながら、回転寿司システムを「構築」しただけで廃棄率が75%減したということはないわけで、システムにどのような設定を施すかの「手探り」が必要になります。それが「運用」によるチューニングというわけです。逆に言えば、スシローは廃棄率100%減を目指して、今もチューニングをしている最中なのだと思います。
では、「構築」です。
*商品マスターがなければ鮮度の管理ができない
まず欲しいのが商品マスターです。
寿司ネタのSKUごとに、商品データを作成していきます。まぐろでも、赤身・中トロ・大トロ・漬け・あぶり等々ありますからね、各々の商品データに分けます。個々の寿司ネタによって、廃棄するまでの時間が違うので、鮮度時間もしくは走行距離をデータに入力しておく必要がありそうです。
スシローの場合は、この走行距離がポイントのようですね。まぐろの場合であれば回転レーンを「350メートル」走行すれば、鮮度が落ちたとして、自動的に廃棄に回るようです。自動廃棄のアルゴリズム設定にも関わってきそうですが、鮮度時間や走行距離という絶対的な数字だけではなく、店内の気温や湿度、空調(風が当たるか)によっても鮮度管理が変わってきますし、仕入れている寿司ネタに一定以上の品質管理をしていることが前提条件になります。
いままで1日に100皿を廃棄していたものが、75皿減って、25皿になった、というように廃棄率を皿枚数比で計算するのではなく、1日に100万円分の寿司を廃棄していたものが、75万円分減って、25万円分になった、というように廃棄率を金額比で計算するのならば、商品マスターに原価の欄が必要になります。
通常の商品マスターなら、当然のように原価の項目が必要になると思うのですが、今回の「データ活用によって廃棄率を下げる」という場合にも、金額比ならば必要ということです。金額比でなければ、今回の件については原価の必要はありません。ここで書いた、原価ですが、寿司ネタの金額・シャリ(米)の金額・寿司を握った(もしくは機械を操作した)スタッフの工賃・店舗までの配送費・店舗で冷凍/解凍したコストなどを含みます。廃棄率を下げるということは、このコストすべてをリターンさせるということでもあるわけです。
*「廃棄率を下げる」という目的のために必要な項目
ということで、「廃棄率を下げる」という目的のために商品マスターを構築する場合、必要になる項目は以下のとおりになります。
・商品ID:寿司ネタごとに振られる管理記号
・商品名:回転寿司店舗で販売されている名前
・鮮度時間:寿司1皿が回転レーンに乗りだしてから、廃棄されるまでの時間
・走行距離:寿司1皿が回転レーンに乗りだしてから、廃棄されるまでの距離
・原価:寿司1皿を回転レーンに乗せるまでにかかっているコスト
極端なことをいえば、皿単位で廃棄率を計算するならば、「商品ID」と「走行距離」以外は必要ありません。自ら「鮮度時間」と書いていたのにも関わらず、いきなり覆しますが、鮮度時間は「走行距離÷走行スピード」で算出されるので、あまり必要ないのかもしれません。スシローが「走行距離」と言っているのは、つまり、「走行スピード」はお客様の入店状況や飲食状況によって変わるということだと思います。
それにしても、スシローのまぐろは、自動廃棄までの走行距離が350m、回転寿司のレーンの一般的なスピードは秒速4cm前後(調整可能)のようなので、350m÷4cm=8750秒、つまり、145分、ということは、2時間25分!?計算間違ってないですよね。えっ!?長すぎない?・・マジか・・
つづきはこちら。
[…] ・データを活用して回転寿司の廃棄率を下げる。 【no.0134】 http://www.ecmj.co.jp/?p=1778 […]
[…] データを活用して回転寿司の廃棄率を下げる。 […]