著者:石田 麻琴

コンセプトは、なぜお客様に伝えても伝えても伝わらないのか!?【no.0869】

 お客様に伝わっているようで伝わっていないのが、ネットショップのコンセプトです。

 トップページがあり、カテゴリページがあり、商品ページがある。あるコンセプトに沿ったデザインやレイアウトでネットショップを組み。コンセプトに合わせた商品ラインナップを提案していく。メールマガジンや販促企画もコンセプトを軸にしたところから考えていく。

 ネットショップに表現されているすべてが「ひとつのコンセプト」から成り立っているもの、ということになるのですが、コンセプトがお客様に伝わっていると考えているのは、実は自分たちの思い込みではないでしょうか、というのが今回の話です。

 なぜ、このようなことが起こるのか。それは、自分たちがすでにあるコンセプトを土台にした上で、ネットショップを運営してしまっているからです。

 コンセプトとは自分たちにとっては空気のような存在です。普段、生活している中で意識をして空気を吸っている人はいないと思います。無意識に、そこにあるものとして扱っているはずです。ネットショップの運営においても、コンセプトは常に自分たちの心の中にあります。特別に意識することのない、空気のような存在です。

 ですから、コンセプトを「前提条件」として仕事を進めていってしまうのです。

 ただ、「お客様に伝わっているか」を考える場合、気づかなければいけないことがあります。この空気は「人によって違う」ということです。自分たちの中では前提条件にしているものが、お客様にとっては何ら前提条件ではないのです。むしろ、完全な初見ということになります。

 この自分たちとお客様の「絶対的な差」に注意しなければ、ネットショップのコンセプトは「お客様に伝わっているようで伝わっていない」ことになります。

 なぜこのようなことが起きるかといえば、自社のネットショップに触れている時間の圧倒的な差です。その環境と習慣が認識を大きくずらしていきます。

 ネットショップを運営する自分たちは、毎日ネットショップに触れているわけですから、心の中にコンセプトが根付きます。なので、トップページ、商品ページ、各バナー等、どのコンテンツをみても、コンセプトが伝わるように「勘違い」していってしまうのです。

 逆に、お客様にとって、ネットショップに触れる機会は一瞬です。一瞬で、自分が検討すべきネットショップなのか否かを判断します。数ある選択肢の中から、自分に合ったものを「感覚的に」探しているのです。お客様が自社のネットショップをじっくり見てコンセプトを自ら理解してくれる、ということはありません。一瞬で別のネットショップに移動して終了です。

 デザインもきれい、レイアウトも整っている、商品説明文もわかりやすい、商品画像もそそられる。ネットショップとしての体裁が整っていても、「コンセプト」を伝えるという大切な軸の部分が欠けていないでしょうか。

 「コンセプト」とは、「対象にしているお客様」のことであり、他のネットショップとの「違い」に他なりません。この軸がお客様に伝わらないと、どこかボヤけたネットショップになってしまいます。そこにストーリーが感じられなくなってしまいます。過剰だと思うくらい露出し、何度も伝えるのです。

 困るのは、自社のネットショップにどっぷり浸かっている自分自身には、どこを伝えきれていないのか、どこが「違い」なのかがわからなくなってしまうことです。コンセプトは自分勝手なもので構いません。それが「きちんと伝わっているか」は定期的に外側の人間にチェックしてもらう方が良いかなと思います。

 おわり。