著者:石田 麻琴

オムニチャネルの第一歩。JR西日本とセブンイレブン、ヤフーとCCC。【no.0306】

 毎月開催しているECMJセミナー(詳細はこちら)では、最初の15分程度の時間を使って、その月のEコマース業界に関わる最新トピックスを、弊社視点での考察を交えながらご紹介しています。少し古いニュースになってしまうのですが、これまで紹介したトピックスの中で特に重要と思われるものを書きたいと思います。取り上げたいのは、以下の2つのニュースです。

・西日本旅客鉄道(JR西日本)とセブンアンドアイグループの提携(2014/3)

・ヤフーとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の提携(2014/6)

 これ、詰るところ、2つともデータマーケティングの話になるのですが、今後のオムニチャネルマーケティングの素となる動きになるのではないかと考えています。

 まず、「西日本旅客鉄道(JR西日本)とセブンアンドアイグループの提携」。JR西日本とセブンアンドアイが提携して、JR西日本の駅ナカのコンビニエンスストア500店舗がセブンイレブンになるというもの。現状の「キヨスク」や「ハートイン」がおよそ5年をかけて「セブンイレブン」にリニューアルされていきます。

 セブンイレブンの店舗が500店舗増えて良かったね、という話ではありません。この提携のポイントは、セブンアンドアイが駅ナカのコンビニエンスストアを押さえたところにあります。セブンアンドアイがオムニチャネル化構想を進めている中で、商品在庫データの一元化とともに流通のオムニチャネル化が重要なテーマでもあります。駅ナカのコンビニを押さえることで、「ネットで注文した商品をコンビニで受け取る」というようなサービスが、より実現性の高いものになっていくと思います。その第一歩になるのかなと。

 もうひとつ、ここは私の想像の域を出ない範囲で読んでもらいたいところですが、駅ナカのコンビニエンスストアは、確実にICカードの利用率が高いはずです。顧客データを得るために、各社こぞって会員カードを発行していますが、現状、日本で一番利用されている顧客データは、SuicaやPasmo(関西ならIcoca)などの鉄道会社が発行している電子マネーでしょう。オムニチャネルとは「顧客データの統合」ですから、もし仮にICカードの顧客データの共有が可能になれば、オムニチャネル化の実現に向けて大きな力になるはずです。

 そして、「ヤフーとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の提携」。ヤフーの会員のWeb閲覧履歴のデータと、Tポイントカード会員の利用履歴データを相互に提供するというもの。この提携には、是非さまざまな意見があるかと思いますが、それはひとまず置いておいて、これも「顧客データの統合」の話と考えて間違いないと思います。

 すでにヤフー上では、Yahoo!IDとTポイントカードの連動が行われています。つまり、ID上では「顧客データの統合」は完了しているわけです。ただ、これまでYahoo!IDの会員がWeb上でどのような動きをしているか、Tポイントカードの会員がリアルの世界でどんな購買行動をしているか、というのが連動していなかったわけです。そして、これらのデータが連動することによって、顧客ひとりひとりのWebとリアルの購買行動を紐づけることができるようになります。これが本当の意味での「リアルとネットの融合」のはしりになるかもしれません。

 商品と流通を持っているセブンアンドアイが、利用頻度の高い顧客データを持つJR西日本を仲間にし、Webのデータを持っているヤフーが、実売の利用履歴を持った顧客データを持つカルチュア・コンビニエンス・クラブと仲間になったというのは、オムニチャネルの時代に向けた興味深い動きだと思います。セブンアンドアイはWebのデータを持っていないですし、ヤフーは商品と流通を持っていない。ここをこれからどうカバーするのか、注目したいところです。

 サークルKサンクスが事業売却・・という話もありますし、そのあたりがまた次の展開に結びついてきそうな匂いがしますね。

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