ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら)
「はぁ・・猪井氏(いいし)先生、それはどういうことでしょうか・・」
鬼切社長は猪井氏先生が言っていることの意味を、いまいち把握しきれていないようでした。
「鬼切はん。前に少しだけでもネットショップをかじったこと、あるんとちゃうんかいな。『アクセス人数』とか、『転換率』とか、ショッピングモールの担当者は何か言うとらんかったんか」
鬼切社長は、ショッピングモールの担当者と電話で連絡を取っていた時のことを思い出しました。あの担当者の声を思い出すたび、頭に血がのぼります。それに注意しながら、話していたことを思い浮かべましたが、「アクセス人数」や「転換率」という言葉は記憶にありませんでした。「すいません。ちょっと覚えていなくて・・」。鬼切社長は言いました。
「そかそか。まあええわ。ショッピングモールの担当者としても、あんまり『アクセス人数』とか『転換率』とかって話まで踏み込むと、かえって面倒くさくなる可能性もあるしな。それで触れなかったのかもしれん。鬼切はん、なんとなくでええけども、実店舗に1日何人くらい来店してるか、わからんか」
鬼切社長は、実店舗にどれくらいの方が訪れているかを「どうやれば計算することができるか」考えました。そして、いくつか「計算するための」アイデアが浮かびました。
「数えてないですし、数えられるものでもないので、はっきりとはわからないんですが、おにぎり水産の実店舗って、おにぎり水産の工場見学に来られた方がお土産を買う目的で寄っていってくれるんですよね。バスツアーだと、1つのバスで40名ほどの方が来られて、それが1時間に2本、1日に12本ほど来るので、480名の方は実店舗に寄られますね。工場見学に来られた方は、休憩の時間も挟むので100%、実店舗に入ってくれますから。あくまで、目安かもしれませんが」
「おお、ええなぁ。わかりやすい」。猪井氏先生が頷きました。鬼切社長が他にもアイデアを思いついたようなので、猪井氏先生はあまり口を挟まないようにしています。
「あと、もうひとつ、なんですが、バスツアーの工場見学のついでに寄ってくれる方の他に、ドライブで工場見学と実店舗に来られる方がいらっしゃいます。ここも、それなりのお客様の数がおるんですが、実店舗でね、新商品のビラをお買い物袋に入れさせてもらってるんですよ。レジで。この枚数が、ちょっとわからないんですが、1ヵ月で2万枚くらいですかね。消費しています」
「なるほどな。1ヵ月で2万枚ゆうことは、1日あたり650枚ってとこか。ただ、これはレジで配ってるゆうことだから、『実店舗に来店された』お客様ゆうことじゃないじゃろう。それに、バスツアーの工場見学で来られたお客さんの数も含まれてる」
「確かに、なかなか換算するのは難しいですね」。鬼切社長は寂しそうな声で言いました。
「鬼切はん、まあ、今の話は、ネットショップではその数が出せるって話じゃからな。実店舗でも同じような仕組みが組めればいいんじゃが、なかなか難しいじゃろう。野鳥の会の方みたいなカウンターを持って『カチカチ』ってお客さんの数を数え続けるのはな。でもネットショップだと、それが何の苦も無く簡単に出せる。『それがアクセス人数』ってもんじゃ」
「すいません、猪井氏先生いいですか」。鬼切社長は申し訳なさそうに質問をしました。
「『アクセス人数』って、言葉的にも何を指しているのか何となくわかりますし、それがネットショップだとデータとして取りやすい、ってこともわかったんですが、その『アクセス人数』って、いったい何の役に立つんですか・・?それがわからないんですが」
「そこじゃな」。猪井氏先生は、お茶をひと口飲んでから言いました。
「ネットショップはな、来店したけど買わなかったお客さんの数がわかる、っちゅうことじゃ」
つづきはこちら。
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