著者:石田 麻琴

大ヒットする商品には、どこかにその兆候が表れている【no.1155】

 ネットショップのあるあるストーリー、「鬼切社長シリーズ」。(前回はこちら

「なるほど。お客様から注文をいただくとか、お客様の反応のスピードが早いとかの他にも、七海がいうような『メールや電話の問い合わせの数』や『実店舗でお客様に聞かれた回数』とかも、『売れる商品の見極め』に入ってくるってことか。あんた、なかなかやるわね」

 友花里さんが七海さんをちらっと見ていいました。麻間(あさま)さんはそんな友花里さんを方をみて笑いながらいいました。

「七海さん、よくそんな指標を考えましたね。やりますね」

「いえいえ、私たち、いつも麻間さんや猪井氏先生に鍛えられてますから、指標という概念にはそれなりに強くなってますのよ」

 七海さんが麻間さんをイジるような口調でいいました。麻間さんは横を向いて苦笑いをしました。

「友花里さんが意見してくれたお客様の反応や、七海さんが意見してくれたお客様が購買をする前の様子の変化を追うことができれば、『売れる商品の見極め』というのは何となくわかってくるものなんですね。やっぱりヒットする商品って、どこかにその兆候が表れているものなんです。数ある商品の中からこの『売れる商品』を見つけることがまずは大切なのですが、七海さんがいまおっしゃったようなこと、普通の御店ってやってると思いますか?」

「うーん、私たちはネットショップをやるときに最初に教えてもらったのが『実行数値管理表』だったので、当たり前に毎日やっている感があるんですけど、おにぎり水産も実店舗だけを運営していた時代は、ときたま会議でデータを確認するくらいで、あまり細かくはやってなかったですね、恥ずかしながら・・」

 七海さんが正直にいいました。隣にいる友花里さんも七海さんの意見に同調するように「してないなぁ」といいながら何度も頷きました。

「まあ、そこまで恥ずかしいことではありませんよ。なぜなら、ほとんどの会社がこういったことをしていないからです。やっていたとしても、いま七海さんがおにぎり水産の例としていったように、ときたま確認をしている程度です。きちんと、一定期間で、同じ数字を追えている会社は少ないといえます」

「いつも麻間さんがおっしゃっている、『同一期間同一条件の数字を定期的にウォッチする』みたいなレベルで、ってことですよね」

 友花里さんが麻間さんに聞きました。

「そうですね。ほとんどの会社が、『好きなとき』『できるとき』『余裕があるとき(ヒマなとき)』に思いついたように数字をみています。ひとつの商品を発売したときに、決められた数字を、決められた期間でウォッチして、何かしらの判断を下していく。これを完璧にできている会社なんて、そんなにないんじゃないですかね。それこそ、今回のユニクロなどは、しっかり管理できているのだと思いますが」

「じゃないと、『売れるものを最大限売れる』ことはできないですよね」

 麻間さんの応えに、友花里さんが反応していいました。七海さんは、毎日ネットショップの数字を見ることを習慣化させられている自分たちをちょっと誇らしく思っていました。

「『売れる商品を見極める』ともうひとつ。『最大限に売る』というのも、同じようにデータ指標の話ということになります。たとえば、ユニクロの代表的な商品だとフリースという商品があります。フリースを初速のデータから『売れる商品』と見極めたとして、これを実店舗でたくさん売ろうと思ったとしたら、七海さんはどうしますか?」

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