著者:石田 麻琴

結果に疑問を抱く。結果の原因を探す。そして原因を作り出す。前編【no.0927】

 とある「ぬいぐるみ」が半月で5,700個売れた話です。

 この「半月で5,700個」という数字は多いのか少ないのかわかりません。700円程度のぬいぐるみです。3万円の家電が5,700個売れたわけではありません。捉え方は様々だと思います。「売れた数、売上」というところではなく、その背景を知ってもらえると面白いかなと思います。

 発端は突然のことでした。このぬいぐるみを半月で5,700個売った半年前のことです。その年のGWが終わるか終わらないか、そんな時期でした。それまで眠っていたように動きがなかったこのぬいぐるみが、ネットショップで突然売れ始めたのです。

 1日目100個、2日目150個、3日目300個、4日目150個。ここで売り切れ。急いで問屋さんに問い合わせても、在庫がなく700個までしか用意ができません。それもそのはず、このぬいぐるみ、問屋さんにとっては全く動かないいわゆる「デッド在庫(死に在庫)」。700個売り切れただけ、万々歳だったのです。

 突然のヒット商品の登場に、ネットショップのスタッフは驚きました。また、4日間で700個、49万円ほどの売上がボーナス的に入ってきたわけですから、喜びもありました。なんだかよくわからないけど、ラッキーだね。そんな感じです。

 ネットショップにはボーナス売上が入ってきた。問屋さんはデッド在庫がはけた。全員ハッピーの一時的な特需・・ちゃんちゃん・・となるかと思いきや、そうはなりません。「ちゃんちゃん」とならないのは、お客様です。

 700個が売り切れた翌日、お客様からネットショップに電話がかかってきました。「この商品、次はいつ入荷ですか?」「すいません。もう問屋さんに商品が無い状態でして、廃番なんです。なので、今後の入荷予定はありません」。お客様に申し訳ないなとは思いながらも、廃番なのですから仕方がありません。

 お客様からメールが送られてきます。「この商品なんですが、もう売り切れですか?」「すいません。もう問屋さんに商品が無い状態でして、廃番なんです。なので、今後の入荷予定はありません」。お客様には同じようにこたえます。

 ただ困ったことに、同じ内容の電話とメールが毎日のようにきます。同じ内容の対応を個別にしなければいけないことに戸惑うと同時に、「なんでこのぬいぐるみが突然売れたんだろう。そして、なぜ売り切れた後も問い合わせがくるのだろう」ということが疑問に思えてきました。

 実店舗は、「店舗の中に並んでいるものから、お客様が選んで買っていってくれる」という性質が強くあります。「この商品ないんですか?」と聞かれることも少なくないですが、このぬいぐるみ、キティちゃんやリラックマのような、人気があるキャラクターではありません。

 ネットショップはたくさんのショップが取り扱っているたくさんの商品の中から、お客様が欲しいものだけを探し続けるという性質があります。ネットショップの数はたくさんありますが、お客様にとってはインターネット自体が大きな「ひとつのネットショップ」になっているようなものです。

 そんな中で、なぜうちのネットショップだけに、このぬいぐるみに、毎日電話とメールがきているのか。最初は疑問に思わなかったことが、どんどん気になってきました。

 そして数日後、お客様からいただいた「この商品、次はいつ入荷ですか?」のメールから、お客様からの問い合わせが絶えない理由を知ることになります。

 はたして、その理由とは・・?

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