著者:石田 麻琴

ネットショップで広告を使うふたつの目的を理解しよう。 【no.0149】

 ネットショップを運営していく中で、現状、ある程度の広告投資は避けられないかなと思います。インターネットの業界は、すでに供給が需要を完全にオーバーしており、これからもさらに供給側だけが膨れていくことになります。なので、セオリーとしては(いくらセグメンテーションが進化しても)ひたすら広告の費用対効果は悪化し続けることになるのですが、最初からコンテンツマーケティングのみで戦ったり、検索からの流入だけで戦ったりするのは、成果を判断するまでに時間がかかってしまうので、やっぱり現状はネットショップの広告投資は避けられないのかなと思う訳です

 今回説明するのは、ネットショップで広告をかける際の、2つの目的です。1つは、ネットショップのアクセスを増やすこと、もう1つは売上(利益)を上げることです。当然ですが、広告をかけた結果として、ネットショップへのアクセスが増えて、売上(利益)が増えれば言うこと無しなのですが、最初からそんな状態にはなりません。むしろ、広告を「アクセスと売上(利益)の両方を上げるため」として、期待してしまうからこそ、イーコマース戦略が失敗してしまう、とも言えます。目的と期待のズレということですね。このあたりわかりづらいので、説明に入ります。

 まず、広告を使う目的の1つ目は、「アクセスを増やすこと」です。これはネットショップをスタートした初期に広告を使う目的になります。この場合の広告は、あくまでネットショップに来店するお客様を増やして、「どんな商品のページにお客様からのレスポンスがあるのか」「どんな特集企画にお客様からのレスポンスがあるのか」を確かめるために使います。ここで、「アクセスを増やすこと」に加えて、「売上(利益)を上げること」という目的を加えると、ゴチャゴチャになります。あくまで、「アクセスを増やすこと」だけを考えて広告を使ってください。売上は上がらなくて当然、様々な商品、様々な企画に導線をはり、マーケティングデータを取るための目的として広告を使います。「自分がお客様が喜んでくれると思って作った」コンテンツの中から、どれが実際にお客様にウケるかを調べる手段です。いわば、マジで広告をかける前に、何にマジで広告をかければいいかをトライアルする広告というわけです

 そして、もう1つが、みなさんご存じの「売上と利益を取るため」の広告です。前段の、マーケティングとしての広告の成果、もしくは自然流入からの成果のデータを元に、売上と利益を得るための本格的な広告を出稿します。このマジ広告にチャレンジするにあたって、「どんなお客様に、どんな商品を、どう提案すると、どんなお客様になってくれるのか」をデータ分析しておかなければいけません。逆に言えば、マーケティングとしての広告出稿では、そこを見定めるための広告戦略を取り、データを取得・集計・解析するベースを作っておかなければいけないということですね。その上で、「売上と利益を取るため」のマジ広告の出稿を行います。マジ広告の出稿でリーチしたいのは、「売上と利益」というよりも「自分のネットショップに共感してもらえるお客様」ですね。表現としては、こちらの方が正しい気がします。

 ということで、2つの広告の役割を使い分けましょう、という話なんですが、ネットショップを始めた初期にありがちなのが、「アクセスと売上(利益)」の両方が取れると思って、広告を出稿してしまうこと。そして見事に撃沈して、ショッピングモールの広告担当や、広告代理店を「全然効果がないじゃないか!」と詰めるパターン。広告をかける目的をきちんと伝えていない担当者も担当者で問題なのですが、ここまで書いたとおり、最初から必ずしも広告の効果が出るとは限りませんし、「どこが良いか悪いのかを、アクセスを増やして知る」くらいに思っておかないと、イーコマース戦略は前に進みません。もちろん、広告をかけずともアクセスがある状態であれば理想的です。

 ざっくりですが、広告のかけ方としては、まずは広い範囲から、1つの商品でも様々な提案方法でお客様に露出して、コンテンツの改善を進めつつ成果のデータをみながら、よりレスポンスが良いものに絞っていきます。購入以降のお客様のリピート等のデータも含め、最終的に残ったものにマジ広告をかけるイメージです。まあ、しつこいですが、できる限り広告を使わない方法を考えるのが理想的ではあります。逆に、ある程度の広告をかけても利益が残る仕組み、もしくは商品を考えるという手もありますし。余談でした。

 おわり。