著者:石田 麻琴

(番外編2)渋谷と巣鴨のお客様は異なる。 【no.0138】

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 データを活用して、廃棄率75%減を実現した、スシローのデータマーケティングを解明しよう・・の第六回です。

 前回は「顧客ID」を活用することの有効性について書きました。お客様毎に顧客IDを設定するためには、会員カードの発行やアプリのダウンロード、メールアドレスの登録などのマーケティングが別途必要になってきます。それを前提条件にするわけにはいかないので、今回のテーマでは、「お客様がふらっと店舗に来店して、フツーに回転寿司を食べて帰っていく」過程の中で、お客様のストレスにならず自然に蓄積されていくデータで「廃棄率75%減」のロジックを解明していっています。

 とはいえ、顧客IDがあれば、非常にデータマーケティングの精度が上がりますよね、というのが、前回の話です。立ち位置としては、番外編、としました。そして、今回も番外編のつづきになります。

*「回転レーンに寿司を流さない」判断もありえる

 お客様が会員カードを持って来店し、注文パネルでログインすると、サーバーの顧客IDが紐づいて、過去の来店履歴や注文履歴をデータマーケティングすることができるようになります。

 以前のコラムで、「廃棄率100%減」を実現するためには、「回転レーンに流す寿司をゼロにすれば良い」という話を書きましたが、これだとお客様の需要を満たせないのでNGです。あくまで、お客様の需要を満たしつつ、廃棄率を下げていくことがミッションなのですが、もしお客様の顧客データを分析した結果、「いま、店舗内にいるお客様全員が、注文パネルを使った個別の注文しか利用したことがない」ならば、回転レーンに寿司を流す必要が「ロジカル」になくなるわけです。つまり、この場合は、回転レーン利用の需要がないということですね。

 顧客データは、顧客IDを持っている当人の利用傾向を分析できるだけではありません。顧客IDに、お客様の性別や年齢を登録することで、性別と年齢別というセグメンテーションでの、「利用傾向」を分析できるようになります。

 回転寿司はリピートのお客様だけで成り立っているわけではないですし、リピートしているお客様も最初は新規のお客様であったわけですから、はじめは顧客IDがない状態でのスタートになります。もし仮に、一時的に店内のお客様がすべて新規のお客様になったとしても、これまでのお客様の性別や年齢別の顧客データが揃っていれば、リスクが少なく需要予測をすることができるわけです。例えば、「40代の女性であれば、入店5分以内に5皿注文する」とかですね。これが、需要と供給のバランスを整えることに役立ちます。

*自社の内部データと外部データで需要予測をつくる

 余談ですが、これがまったくの新規出店の場合、お客様のデータは完全にゼロからスタートするわけです。この場合は、これまでに出店している他店での顧客データを参考にして、需要予測のマーケティングを組み立てていくことになります。また、回転寿司という実店舗の特徴として、出店する地域によって、来店するお客様の傾向が異なるという点も、マーケティングに加味しておかなければいけません。渋谷にある回転寿司と、巣鴨にある回転寿司では、お客様の傾向が異なるのです。自社で蓄積した顧客データ(内部データ)と、地域データ(外部データ)を組み合わせることによって、需要予測ができあがっていくというイメージです。

 今回のテーマになっているスシローやくら寿司では、オンラインでの予約のサービスをスタートしています。顧客IDを取るための手段として、予約時に会員登録をしてもらうという方法はアリですね。この予約時の会員登録データを、単に予約のデータとして使っているのか、もしくは顧客データとして注文のデータとの紐づけをおこなっているのかが気になるところです。スシローの「廃棄率75%減」のひとつのポイントとして、「予約時の会員登録(メールマガジン登録)」がある可能性があります。

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